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 スウェットのズボンに手を突っ込むと、44円が小さく音を立てた。1日1食。「今夜は菓子パン1個」

 8月の夜。東京都心の首都高の高架下。タニさん(40)は、蚊取り線香をたき、携帯電話でテレビを見ていた。契約は切れているが、乾電池で充電すれば、2時間は電波を受信する。

 ほかの野宿者が橋脚のたもとで眠った深夜、池袋まで30分以上歩く。底のすり減ったゴムサンダルには穴二つ。アパートに着くと、郵便受けを開ける。折り重なるチラシの下から、500円を抜く。

 幼なじみの男性の家だ。「あいつには頭が上がらないよ」。公衆電話で10円を入れ、彼の携帯に履歴を残す。すると500円や小銭を置いてくれる仕組み。

 頼る家族はいない。四国の出身。生後すぐ施設に預けられ、幼くして農家の養子になったが、父はすぐ手を上げた。「ここに4針ぐらいの傷がある」。頭の傷は薪で殴られた痕と言う。家に居場所はない。1996年、20歳でこの幼なじみと上京。家と縁を切った。

 東京で5年以上、建設現場で働いたが、次第に気持ちは切れた。公園で野宿すると心地が良い。20代半ばから、路上と幼なじみ宅の往復。時々、日雇い労働。

 今の暮らしが、すべてタニさんのせいだとは思えない、と私は伝えた。頼るべき家族がないのだから。だが、タニさんは笑った。

 「恨むなら自分。仕事が長く続…

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