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 出張中、ムンバイ空港内の書店をのぞいて驚いた。レジ近くの目立つ一角に、ヒトラーの自伝「わが闘争」が平積みされていたからだ。

 ドイツで長く禁書扱いだった同書だが、インドでは15年ほど前からベストセラーなのだという。見れば、街の書店でも露店でも、いたるところで売られている。ヒンディー語版と英語版の両方をガラス張りのウィンドーに陳列していたニューデリーの老舗書店のオーナーは「彼が悪いことをしたのは事実だが、リーダーシップを学ぶにはいい本だ」。ネット書店のコメント欄には「先見の明があった指導者」などの賛辞も多い。

 仏人記者が著した「ヒトラー『わが闘争』がたどった数奇な運命」によると、ヒンドゥー至上主義を掲げる政権が誕生した頃から、反イスラム暴動が起きた地域を中心に売れ始めたらしい。地元の記者は「排他的なヒンドゥー・ナショナリズムに、本が裏付けを与えている」と心配する。

 特定の民族を「寄生虫」に例えた90年以上も昔の本。それがなぜ、今これほどの人気を博すのか。これから何をもたらすのか。怖くなった。(守真弓

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