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(29日、柔道・世界選手権 男子66キロ級)

 ようやく立てた大舞台で躍動した。日本柔道界の「ホープ」と期待され続けた20歳の阿部が、初出場で世界一の称号を手に入れた。

 力強い戦いぶりだった。3回戦は防御を固めて極端に腰を引く相手を捕まえ、体落としでたたきつけた。準々決勝は実力者のザンタラヤ(ウクライナ)を豪快な背負い投げで畳に沈めた。そのままの勢いで準決勝、決勝も勝ちきった。

 兵庫・神港学園高2年の17歳で講道館杯を制し、華々しいデビューを飾った。日体大柔道部の山本洋祐部長は「柔道をするために生まれてきた。20年に1人の逸材」と言う。強靱(きょうじん)な肩の力、投げの絶妙なタイミング。中学、高校と、同世代では敵なしだった。

 様々な格闘技の要素が混じり合い、「柔道」が「JUDO」になって久しい。だが阿部は「しっかり相手と組み合って、一本を取る柔道がしたい」と口癖のように言う。映像を使った相手の研究も好まない。柔道着は絶対に他人に触らせず、自分で洗って、干して、たたむ。畳の内外で、柔道との向き合い方を大事にしてきた。

 「一歩ずつ」との思いが込められた一二三という名前。10代での出場が期待されたリオデジャネイロ五輪は海老沼匡に代表の座を奪われ、「一番大きな挫折」からの再出発となった。「自分の柔道を貫き、優勝する」と宣言したブダペストで、鮮烈な第一歩を踏み出した。(波戸健一)