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 「激しい球際での攻防」と「縦への速い攻撃」。この二つを意識して戦ったサッカー日本代表が、6大会連続のワールドカップ(W杯)出場を勝ち取った。バヒド・ハリルホジッチ監督(65)が就任してから約2年半。指揮官が求める戦い方は選手たちにどこまで浸透し、結実したのか。アルベルト・ザッケローニ氏が率いていた4年前のW杯アジア最終予選と比較しながら振り返った。(データはデータスタジアム社提供)

タックル数、4年前から2割増

 W杯行きを決めた8月31日の豪州戦。身長171センチのMF井手口(ガ大阪)は、開始直後から190センチ前後ある豪州の選手たちに果敢に体をぶつけ、彼らの足元から次々と球を奪い取った。「監督の指示。チームの戦術だった」と井手口。W杯予選での対豪州戦8試合目にして、初めて無失点で勝った。

 2015年3月に就任したハリルホジッチ監督は、球際の競り合いにひるむことなく挑み、勝ちきる強さを選手に求めた。好んで使う言葉は、フランス語の「デュエル(決闘)」だ。

 それを表すデータの一つが、体を投げ出して相手の球を奪いにいくタックル数。今回の最終予選では、1試合平均23・1回試みており、4年前から約2割増えた。タックルを含めて、相手から球を奪った回数についても4年前の平均69・3回から、76・5回に。特に、ピッチをセンターラインで2分割したとき、相手ゴールのある敵陣で球を奪った回数は、平均13・3回から19回になった。31日の豪州戦でもFW大迫(ケルン)やFW乾(エイバル)が、豪州のペナルティーエリア付近まで球を追いかけ、相手が苦し紛れに蹴り出すシーンが何度も見られた。

10秒未満のシュート、3倍に

 攻撃面で目指したのは、「縦への速さ」。球を奪い、余計な手数をかけず、相手の守備が整わない間にシュートまで持ち込み、得点につなげようとした。

 今回の最終予選では、球を奪ってから10秒たたないうちにシュートまで持ち込んだプレーが1試合平均で3回あった。細かいパスをつなぎながらボールを保持し、試合の主導権を握るスタイルだった4年前のおよそ3倍。昨年10月に敵地であった豪州戦で、FW原口(ヘルタ)が相手DFの裏へ抜け出してGKとの1対1に持ち込み、冷静に蹴り込んだゴールは、ハリルホジッチ監督が理想とする形から生まれたものだった。

 「我々はボール保持率が50%以下のときにいい試合が出来ている」と普段から話しているハリルホジッチ監督。あえて相手に球を保持させ、隙を見て奪っては攻撃につなげるスタイルを好んだ。1試合平均の保持率は、4年前の58・2%から、48・3%に下がった。31日の豪州の保持率は38・6%。しかし、相手に打たれたシュート数は5本しかなく、逆に日本が18本を放って2点を挙げた。選手たちが攻守にわたって監督の求めるスタイルを実践していたことが分かる。

 ただし、速い攻撃が必ずしも効果的だったとは言い切れない。

 FW本田(パチューカ)が「監督がやりたいサッカーがあって、それをストレートに伝える。若手が聞きすぎて消化しきれない」と振り返ったことがあるように、速さにこだわりすぎて攻めが雑になるシーンが少なくなかった。

 球を奪ってから10秒たたないうちにシュートまで持ち込んだプレーが、得点に結びついたのは27回中4回で、成功率は約15%。4年前の22%から落ちてしまった。精度の向上が、本大会での1次リーグ突破や初の8強入りを狙うには欠かせない。

 前回のザッケローニ氏が最終予選で先発させた選手は19人(全8試合)。主力の固定化が目立ち、ときに批判を浴びることもあった。これに対してハリルホジッチ監督は「その時点でベストと思える、プレーするのに値する選手を使う」と繰り返してきた。31日の豪州戦でも乾を左サイドに置くなど、26人(9試合終了時点)を先発で起用した。新陳代謝を活性化させ、若手の成長を促した。(清水寿之)

W杯アジア最終予選での日本の平均データ

(各項目は左からロシア大会(9試合終了現在)、ブラジル大会(全8試合)の順)

タックル 23・1回 18・8回

ボール奪取 76・5回 69・3回

ボール奪取から10秒未満のシュート 3本 1.13本

ボール保持率 48・3% 58・2%

※データはデータスタジアム社提供