著書「共通感覚論」「術語集」など幅広い分野での独自の論考で知られる哲学者で、明治大名誉教授の中村雄二郎(なかむら・ゆうじろう)さんが、老衰で26日に死去したと、所属していた明治大が発表した。91歳だった。葬儀は近親者で営んだ。後日しのぶ会を開く予定。

 東京生まれ。東大文学部を卒業し、文化放送を経て明大教授などを歴任した。パスカルやデカルトを中心としたフランス哲学を出発点とし、60年代には人間の生の根源である情念に注目した論考を発表。70年代以降は、人間の認識のあり方を根源的に考え直す共通感覚論やトポス(場所)論などを展開した。

 生きた学問としての哲学を重視し、科学技術や生命倫理、21世紀の戦争やテロなどのテーマに積極的に発言した。

 演劇好きで知られ、劇評も手掛けるなど、従来の「哲学者」のイメージを超える活動で知識人らに大きな影響を与えた。著作の一部は中国や台湾でも翻訳出版された。

 おもな著作に、「感性の覚醒」「魔女ランダ考」「西田哲学の脱構築」「悪の哲学ノート」など。難解な術語をわかりやすく説明する入門書を数多く手がけ、84年に刊行された「術語集」は、哲学書としては異例のベストセラーとなった。仏哲学者ミシェル・フーコーの翻訳者としても知られる。93~95年、本紙「こころ」のページにほぼ週に1回、「人類知抄 百家言」を連載した。