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 有望な選手が高卒で実業団入りするケースが多かったバスケットボール女子で最近、大卒選手が台頭し始めている。どんな変化が生まれているのか。

教員志望だった水島、代表入り

 7月のアジアカップで3連覇を達成したバスケット女子。豪州との決勝は、1点差で競り勝つ接戦だった。この試合でチーム最多26得点を挙げた水島沙紀は、関東大学リーグ2部の東京学芸大を経てトヨタ自動車に加入した。今回が代表初選出の26歳だ。

 強豪の愛知・桜花学園高で3年時、主力として高校総体、国体、高校選抜の「3冠」を達成。卒業後は教員を目指し、東京学芸大へ。井上真一監督からは「本当にいいのか?」と何度も念を押されたが、進学は中学時代から決めていた。「高卒で実業団に入ったら、経験すべきこともできず、選手をやめた後の生き方も難しいなと思って」

 全日本大学選手権には2度出場したが、1部昇格はかなわなかった。進路を本格的に考えた時、「もう一度上のレベルで勝負したい」と思うようになった。声をかけてくれたトヨタに入団。3季目の昨季、先発出場のチャンスをつかみ、4年ぶりにWリーグ決勝進出の原動力となった。

 学生時代、実業団で活躍する同世代の選手を見て「うらやましい」と思うこともあったが、選択を後悔したことはない。「教育実習もアルバイトも経験できた。何より、ボロボロの体育館で一つしかない扇風機を奪い合いながら練習した4年間のおかげで、環境に感謝できるようになった」と話す。

 選手としてのピークが早いといわれる女子バスケット。アジアカップのメンバー12人の中で、初選出ながら水島は上から4番目。だが、水島は「自分としては今がベスト」と話す。

「選手としての成長にも意義」

 女子バスケットの日本代表では、04年アテネ五輪では12人のうち4年制大学出身者が1人だけだったが、今回のアジアカップでは3人。またWリーグ9連覇中のJX―ENEOSはこれまで大半が高卒選手だったが、アジア杯で大会ベスト5に選ばれたポイントガードの藤岡麻菜美(筑波大)ら、2年連続で大卒選手を獲得。Wリーグによると大卒選手は増加傾向で、10月に始まるシーズンは登録選手の半数を超えるという。

 96年アトランタ五輪代表で、ジュニア世代の女子代表監督の萩原美樹子さんは、実業団が高卒選手を重用してきたのは、結婚などをきっかけとする引退時期の早さと、「大学でプレーに変な癖がつく前の方が指導しやすい」という考えが背景にあったと指摘する。

 バレーボールや柔道なども女子は高卒は少なくない。女性スポーツに詳しい筑波大の山口香准教授は「戦前、日本では大学でスポーツが広まった。そのため男子は大学スポーツに伝統があるが、女子はバレーの『東洋の魔女』のように、働きながら世界を目指した。女子に大学スポーツの概念が薄いのはその歴史的背景が影響している」と説明する。

 一方、大学進学の大きなメリットの一つは現役引退後のセカンドキャリアに幅が広がることだ。萩原さんは「引退後の生き方もしっかり考えなければいけない時代。進学する選手が増えてきた背景には、そういう意識の高まりがある」。

 山口准教授は、大学での4年間は選手としての成長にも意義があるという。「大学に入って初めて自主性が重んじられ、様々な出会いや経験を経て自立した選手に成長していく印象がある」と話している。(伊木緑