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 野球において、攻めているのは投手なのか、打者なのか。攻撃という言葉からして、打者が攻めているはずなのだが、先にボールを操れるのは投手であり、打者は受け身になっているとも言える。

 そんなことを改めて考えたのは、今夏の甲子園大会で、打者が実に奔放に、ノビノビと打っている印象を受けたからだ。第99回全国高校野球選手権大会で飛び出した本塁打は68本。これまでの大会記録60本(第88回大会=2006年)を大きく更新した。

 「今の子はすごいですね。甲子園という舞台でも、まったく緊張していないように見える」と語ったのは智弁和歌山の中谷仁コーチだ。「いっちょうやったろか、という感じで、初球からガンガン打ってくでしょ。ぼくらの頃とは明らかに違ってきてます」

 1997年夏に主将として全国制覇を果たし、プロ野球で15年間プレーした。今年から母校を指導し、2年ぶりの甲子園に導いた。20年前の第79回大会もラッキーゾーン撤去後最多となる28本塁打が飛び出し、「打高投低」と言われたが、「ぼくらはまだ送りバントが基本だった」。確かに犠打飛は20年前の235個から185個に激減した。

 今夏は初球をとらえた13発を含め、第1ストライクで決めた本塁打が28本。大会を通じて「待球作戦」をみることも、ほとんどなかった。

 背景には食事を含めたトレーニング理論が進化したことによる選手の大型化がある。非力な「守備の人」はいなくなり、下位打線にも長打力がある選手が並ぶ。68本塁打の半数近い32本は、クリーンアップではない打者が打つなど、本塁打は全打順から生まれた。「代打満塁本塁打」を放った三好(明豊)ら3人は途中出場の選手だった。

 高校野球はこのまま、投手が受け身の時代が続くのだろうか。

 「バッテリーに工夫の余地もありますよ」と、捕手出身の中谷さんは指摘する。「全体的に真っ向勝負をしすぎ。もっとボール球を振らせる。状況によっては勝負を避けるのも恥ずかしい作戦ではない。正々堂々という意識が強すぎる。打者につられるように、バッテリーまでガンガンいく必要はありません」

 パワー全盛の時代に、投手が主導権を取り戻すことができるか。逆襲に期待したい。(編集委員・安藤嘉浩

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