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中西哲生コラム「SPORTS 日本ヂカラ」 日本が6大会連続6回目のW杯出場を決めました。オーストラリア戦、試合の入りから、日本が前からしっかりプレスをかけてみせた一方、相手はラインは下げていなかったものの、前からプレスに来る積極性は見せません。

 10分を過ぎた辺りから、日本はラインを維持しながらもハイプレスに行くのをやめ、落ち着いた試合運びに変えていきました。勝ち点3が必要だからと変に前のめりにならず、「前半は0―0で折り返してもいい」という落ち着きの中、前半41分というハーフタイム前の良い時間帯に、先制できたことが大きかったでしょう。

 その先制点は、日本が研究してきたことを生かしたシーンでした。長友が左から内側にカットインし、斜めのボールを、右から斜めに走り込んだ浅野に出して生まれました。長友は浅野が走り込めるぎりぎりのタイミングまで待って、一番良いタイミングでパスを出した結果、浅野がオフサイドにならず完全にフリーになり、冷静に左足インサイドでゴールに流し込みました。ここ最近のオーストラリアの守備の弱点、つまり4バックから3バックに変更し、その3バックの両脇が空くことを、日本は研究していたはずです。それを選手たちが理解し、一番大事な場面で冷静かつ忠実に、それを実行できました。

 後半は、オーストラリアの圧力が強くなりましたが、日本は昌子とのコンビが熟成した吉田を中心に、GK川島を含めて相手の攻めをよくしのぎました。そして、後半37分という、一番追加点の欲しい時間帯に2点目を奪いました。途中から出た原口が五分五分のボールをうまく拾い、井手口に。井手口はそれまで実にエネルギッシュなプレーを見せていましたが、この時は、外からカーブで巻く、GKから見て遠い軌道のシュートを慌てることなく決めました。本人も試合後、「入れと思わず蹴ることができた」と話していましたが、力むこともなく、先制点の浅野同様、冷静に蹴り込みました。

 この試合、浅野と井手口という若手が大一番で躍動する形となりましたが、それができたのも、川島、吉田、長友、長谷部というベテランの安定感があったからこそでしょう。前回のブラジル大会でも主力だった世代と、新しい世代がかみあったことは、今回の試合の大きな注目点でした。

 ハリルホジッチ監督が就任以降に掲げてきた「デュエル(決闘)」でも、五分五分の状況でボールを奪い取るシーンが、この試合では何度もありました。ブラジル大会で日本は、しっかりつなぐサッカーを目指しましたが、今は相手がボールを保持していてもそれを奪い、そこからタテに速いサッカーを展開できる。実際、オーストラリア戦の日本のボール保持率は、たった38・4%でした。ここからも、これまでとは違う形での日本サッカーの上積みが、この試合ではみられました。そうした日本サッカー全体の進化と、大一番で若い選手が伸び伸び、はつらつとプレーできた状況、これが今回の最大の勝因ではないでしょうか。

 もちろん、これで満足する選手たちではないでしょう。レベルをワンランク、ツーランク上げていかないと、これまでのW杯の最高成績だったベスト16を超えることはできません。もともと日本が得意とする細かいパスを回して論理的に崩す力と、ハリルホジッチ監督の下で培ってきたデュエルとタテへの速さを融合させたサッカーを実現し、来年の本大会ではベスト8という壁を越えることを期待しています。

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 なかにし・てつお 1969年生まれ、名古屋市出身。同志社大から92年、Jリーグ名古屋に入団。97年に当時JFLの川崎へ移籍、主将として99年のJ1昇格の原動力に。2000年に引退後、スポーツジャーナリストとして活躍。07年から15年まで日本サッカー協会特任理事を務め、現在は日本サッカー協会参与。このコラムでは、サッカーを中心とする様々なスポーツを取り上げ、「日本の力」を探っていきます。