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(18日、広島3―2阪神)

 その右足はギプスで固められて痛々しい。プロ野球広島カープが2度目のセ・リーグ連覇を果たした甲子園。グラウンドに立てなかった若き主砲、鈴木誠也外野手(23)はスタッフの肩を借りながら、歓喜の輪に歩み寄った。「けがをしたのにもかかわらず、この場に立ち会えたことに感謝したい」

 同僚とハイタッチを交わす。そしてファンの陣取る左翼席に手を振った。だが、心中には悔しさがあった。「大事な時期に離脱して、迷惑をかけてしまった。試合に出られずに歯がゆいというか、何しているんだろうなって」

 プロ入り5年目の今季、初めて打線の顔である4番に座った。一流打者の証しである「打率3割、本塁打30本、100打点」をすべてクリアするペースで打ち、連覇へと突っ走るチームを引っ張っていた。

 暗転したのは8月23日、敵地でのDeNA戦だった。守備の際に右足首を痛めた。くるぶしの骨折、靱帯(じんたい)の損傷で手術し、全治3カ月の診断を受けた。今季絶望の大ケガだった。

 定位置を奪った昨季、ブレークした。6月に2試合連続でサヨナラ本塁打を放ち、その活躍ぶりは「神ってる」と評され、12月には流行語大賞に選ばれた。実はその言葉が嫌いだ。「なんかまぐれみたいで」。2年連続で成績を残して、まぐれと言わせない。その思いで今季を戦っていた。

 東京・二松学舎大付高から2012年秋のドラフト2位で入団。猛練習の逸話には事欠かない。「努力という言葉はあまり好きじゃない。当たり前なんで」。昨年、日本シリーズで敗れると室内練習場にこもった。出てきたのは午前2時。試合終了から3時間以上がたっていた。今年こそ日本一を、と願っていた。

 6日に退院し、8日から広島県廿日市市の球団施設で練習を再開した。体幹強化や右足の指でタオルをつかむなど地道なトレーニングを重ねている。「あまり強くなかった上半身を鍛えるいい機会と思っています。この悔しさをバネに、来年はリーグ3連覇に貢献できるように頑張りたい。最強の体で帰ってきたい」。日本一の夢はチームメートに託した。来季は復活ではなく、進化してグラウンドに戻ってくる。(吉田純哉)