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 この夏、アルペンスキー界に衝撃が走った。昨季、男女通じてワールドカップ(W杯)史上初の個人総合6連覇を遂げたマルセル・ヒルシャー(28)=オーストリア=の左足首の骨折だ。現地の報道では手術せず、ギプスで6週間固定するという。2季前、スタッフとして彼を支えた全日本の安食真治(あじき・まさはる)コーチ(37)は早期の復活を願う。

 事故が起きたのは8月17日。オーストリアの氷河で練習した際、ポールに足を引っかけて左足のくるぶしを痛めたという。その夜、全日本合宿でスイスにいた安食コーチに、ヒルシャーを指導するマイク・ピルシャー・コーチから連絡が入った。「僕もすごく落ち込んでいたら、ピルシャーは『大丈夫だ。時間が解決してくれる』と」。意外にも前向きに受け止めていたという。

 現役時代、技術系種目で世界に挑んだ安食コーチは2015~16年、日本オリンピック委員会のスポーツ指導者海外研修事業を利用して、アルペン大国のオーストリア・スキー連盟にコーチ留学。最初は警戒されたが、運良く「チーム・ヒルシャー」と呼ばれるトップチームに同行でき、アシスタント・コーチとしてW杯総合5連覇を支えた。

 けがのリスクが高いアルペン競技で、強靱(きょうじん)な体を持つヒルシャーは大けがをしてこなかった。昨季のW杯では、出場したレースをすべて完走してきた。勝ち続ける要因の一つとして、安食コーチは危険を避ける能力が高いと見る。試合はもちろん、練習コースをきれいに仕上げても、本人はしつこく大丈夫かと確認してきたという。

 それだけに、安食コーチは今夏の事故が信じがたかった。「ヒルシャー選手は今季初の雪上練習だったと思う。リラックスした中での練習だったからポールを見落としてしまったのか」

 W杯では圧倒的な強さを誇るヒルシャーも、一発勝負となる五輪では金メダルを手にしていない。過去2回出場し、メダルは14年ソチ五輪男子回転の「銀」だけだ。安食コーチは言う。「五輪を最大の目標に置いている。五輪まで時間はあるし、チーム・ヒルシャーの強みはレベルを戻すのにどれだけかかるかを把握していること」。平昌(ピョンチャン)五輪シーズン幕開けとなる10月末のW杯開幕戦は出場できないが、ピルシャー・コーチは12月上旬の北米でのW杯に間に合えば大丈夫だと、話していたという。(笠井正基)