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 元世界女王が復活の兆し――。3日まで大阪府門真市の東和薬品ラクタブドームで開かれていた競泳の日本学生選手権で、渡部香生子(早大)が女子100、200メートル平泳ぎで2年ぶりの2冠を達成した。「これからの一生で絶対に忘れない夏になった」と満面の笑みで話した。

 3日の女子200メートル平泳ぎ決勝で、5レーンで泳いだ渡部は一度もトップを譲ることなくフィニッシュ。レースぶりは圧巻だった。2年ぶりのインカレ2冠という結果に、「正直、うれしい」。

 背景には苦悩の日々があった。昨夏のリオデジャネイロ五輪女子200メートル平泳ぎ。2015年の世界選手権を制した種目で、渡部は金メダル候補と注目されていた。が、決勝にすら進めず敗退。昨年12月には足首を捻挫して、練習もできない状態に。「もう、東京(五輪)なんて出たくないし、4年のインカレが終わったらみんなと一緒に引退しようかな……」。心身ともにドン底まで落ちた。

 それでも、はい上がってきた。「今まで水泳しかやったことないし、『こんな私に何ができるんだろう』って。ただ、水泳から逃げようとしてるだけだった」。同じ早大水泳部で世界の頂点を目標に戦う坂井聖人や渡辺一平らの姿も刺激になった。「シンプルに練習を頑張ってるなって。そういうのからちょっとヒントをもらえた」

 今年2月から練習を本格的に再開。世界選手権代表は逃したが、8月のユニバーシアードでも平泳ぎ2冠を達成し、今回のインカレの好成績につなげた。

 確かに200メートルの記録は2分24秒22で、優勝した15年世界選手権の2分21秒15からは3秒以上遅い。「もう少し上を目指していたので少し悔しいです」とタイムには納得していない。それでも「こういう結果が久しぶり。なんか、全部が吹っ切れた感じ」。苦しみを乗り越え、一回り成長した渡部が再出発の一歩を踏み出した。(大西史恭