【動画】青山学院大が取り組む最先端トレーニング「タバタプロトコル」=松本行弘撮影
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 11月の全日本大学駅伝で2連覇、来年1月の箱根駅伝で4連覇を目指す青山学院大が、「さらに上」を目指す最先端の科学的トレーニングに取り組んでいる。立命館大の田畑泉教授(運動生理学)が1996年に米スポーツ医学会誌で発表した「タバタプロトコル」。青学大の原晋監督は「レベルの高い選手の限界を上げられる。効果は実感している」という。

 7月、青学大相模原キャンパスの陸上競技場で行われた練習。通常の走り込みを終えたエース下田裕太は、チームの練習を終えると、一人で「タバタ」に取り組んだ。

 ストップウォッチを持ったコーチが付き添い、腕立て伏せとジャンプを繰り返すバーピージャンプやシャドーボクシングを20秒間。「とにかくきつい」という下田の表情はみるみる苦しそうになった。10秒の休息をはさんで8回の繰り返し。休息時の心拍数は1分あたり200回を超えた。

 「タバタ」を導入して約1年。週2回を欠かさないという下田の実感は「昔の名選手がやっていた猛練習は、自分の体に合うかわからない。タバタは科学的な根拠があるので、自分にも効果があると信じられる。レースの勝負どころでしか出さないような力を何度も振り絞るので、陸上長距離に必要な精神面も強くなる」。

 「タバタ」はもともとスピードスケート日本代表が夏場の合宿で取り組んでいた自転車トレーナーを使った練習の一つ。田畑教授が複数の練習メニューを比較したところ、20秒の高強度の運動を10秒の休息をはさんで4分間繰り返す練習が、持久力に影響する「最大酸素摂取量」と、持続時間30秒から3分程度までの瞬発力に影響する「最大酸素借(しゃく)」の両方に、最大の負荷を与えていた。持久力と瞬発力を同時に鍛えられる効率のいいトレーニング法だという。

 ポイントは最大酸素摂取量でまかなえるエネルギーをはるかに超える力を20秒間出し続けること。青学大では、心拍数が1分あたり180回を超えることを目安にしている。

 動画投稿サイトで「TABATA」を検索すると、視聴回数が100万回を超える動画がいくつも見つかる。腕立て伏せ、もも上げ、大きなハンマーでタイヤをたたくなど、様々な方法で「タバタ」に取り組む人がいる。

 田畑教授は韓国、中国、欧州でも「タバタ」について講演し、健康目的のフィットネス産業にも影響を与えた。国内ではバドミントン女子のトップ選手が練習に取り入れている。しかし日本代表級の選手を広く支援する国立スポーツ科学センターや日本スポーツ振興センターでは、「タバタ」に注目した練習や研究はしていないという。

 田畑教授は「鍛えられた一流選手がさらに強くなるためのきつい練習。一般の人はやらないと思ったので欧米での普及と人気には驚いている。2020年東京五輪に向けて日本にも広めたい」と話す。

 「タバタ」は30秒から3分程度続く高強度の運動に効果があるとされ、陸上競技の中距離種目、競泳や球技などが当てはまる。しかし最新のトレーニング理論に詳しい福岡大の田中宏暁教授(運動生理学)は「タバタの後に負荷の軽いランニングをすることをマラソン選手に勧めたことがある。工夫すればいろいろな競技に取り入れられるはず」と話す。

 青学大の原監督も試行錯誤しているところだ。「意識が高くなければなかなか出来ない練習だが、筋肉や関節のけがを心配せずに心肺機能に負荷をかけられる。けがを再発させたくないリハビリ中の選手にもやらせている。ただ、だれでもやれる、だれにでも効果がある、というトレーニングではないかもしれない。レースへの影響もわからないので、昨年度はレース直前にはやらせなかった。今後どこまで取り入れるかは、データを確かめながら考えたい」と話す。(忠鉢信一