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 1カ月ほど前、五輪に詳しい知人とロンドンのカフェで雑談しているとき、忠告された。「秋には、五輪招致のスキャンダルがはじけるよ」

 彼の見立てはこうだった。9月の国際オリンピック委員会(IOC)総会でパリが2024年五輪の開催都市に決まれば、仏検察が五輪招致をめぐる買収スキャンダルの捜査を再開し、一気に動き出す。対象は16年リオデジャネイロ大会と20年東京大会だ。

 なぜ、秋か。パリが決まる前にIOC委員に逮捕者が出たら、仲間意識が強い委員たちはパリを目の敵にして落選させる恐れがあるからだ。ただ、米ロサンゼルスしか対抗馬がなかった招致争いは、2都市とIOCとの合意で24年パリ、28年ロスで内定している。13日の総会での投票は、いわば儀式にすぎない。

 知人の予言は的中した。5日、仏検察とブラジル司法当局が連携し、リオの大会組織委員会会長で、元IOC委員のヌズマン氏の自宅を家宅捜索し、出頭を命じた。現地報道によると、リオが勝った09年秋の総会の投票前に、当時IOC委員だったディアク前国際陸連会長の息子にブラジル企業から200万ドル(約2億1600万円)が渡り、IOC委員の買収に使われたという。ヌズマン氏は仲介役を務めたとされる。

 リオが勝ったコペンハーゲン総会を取材し、当選した直後のルラ・ブラジル大統領やパエス・リオ市長らの狂喜乱舞ぶりを覚えている。その後、ルラ氏は収賄などの罪で禁錮9年6カ月の判決を受け、パエス氏も五輪の競技会場などの工事を請け負った建設会社から巨額の賄賂を受け取った疑いが持たれている。

 IOCにとっては、この手の醜聞は痛い。世界の都市で招致熱が冷え込んでいる原因の一つが五輪絡みの汚職、金権体質だからだ。バッハ会長はいう。「既得権益層が一体で計画を進めるとき、市民は懐疑心を抱く。何か良からぬことをたくらんでいると」。リオの事例は、政財界の癒着による汚職の典型といえる。

 仏検察はディアク父子が東京五輪招致でも巨額の賄賂を受け取ったとにらんでいる。東京の招致委員会が13年秋の招致決定の前後に、ディアク父子と関係が深いとされる会社にコンサルタント料として支払った約2億3千万円の行方が疑われている。

 矛先は日本に向かうのか。(編集委員・稲垣康介