百歳を超えてなお現役の歌人として創作を続けていた静岡県下田市立野の渡辺つぎさんが6日、老衰のため死去した。106歳だった。

 百五年生きていること不思議なり預かりものの体のごとし

 今年2月、短歌の全国的な賞を受賞した作品だ。何よりの楽しみだった月1回の短歌会も6月まで自宅で開いていた。毎朝、新聞を読み、総合月刊誌にも目を通す生活は変わらなかった。6月にあった県知事選では「どうしても投票する」と家人に連れられ、期日前投票した。

 次男の紘さん(76)によると7月、体調を崩して一時入院。その後はほとんど寝たきりになったが、「延命治療はいらない」といい、周囲への気遣いも持ち続けたという。

 1911年(明治44年)、現在の下田市須原に生まれた。父親をすぐに亡くし、母親が農業で6人の子どもを育てた。子どものころ、母の帰りを待つあいだ雲を眺めるのが好きだったという。自作に雲や空を詠んだものが多いのはその影響だと著作に書いている。

 歌人としての出発は70代と遅い。精力的な活動ですぐさま短歌雑誌の常連になった。悲しい歌は詠まない。日々のありのままを前向きに切り取るのが作風だ。100歳で総まとめのつもりの歌集「ひこばえ――百年の譜」を出版した。その後も変わらぬ創作を続けていると、東京の出版社から「ぜひ出したい」と申し出があり、「一日一日(ひとひひとひ)はたからもの」を103歳で出版した。

 からっぽの記憶の箱よ泣くなか…

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