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 4人の子ども全員を、最難関とされる東京大学理科Ⅲ類(理Ⅲ、医学部)合格へと導いた「佐藤ママ」こと佐藤亮子さん(奈良市在住)。「受験は母親が9割」などの著書があり、常に発言にも注目が集まる佐藤ママに、受験や子育てのことを聞いてみた。

母親が9割?

 ――「受験は母親が9割」(朝日新聞出版)の著書があります。働く母親にとって「9割」は難しいと思いますが。

 私は専業主婦で、あれこれやれましたが、気持ちが9割でいいんですよ。

 例えば、科目によって違う下敷きを使う子がいました。お母さんは仕事から帰宅後、それぞれのノートで、次の日に使うところに下敷きを移していたそうです。そして鉛筆を削って、塾前に食べるスイーツを用意して朝でかける。

 子どもはノートを開くたびに、今日使うページに下敷きが挟み直してあるのを見つけます。母の愛を感じると思います。それが大事。それが「9割」なんですよ。

 ――残り1割は?

 子どもの頑張りということです。

 ――父親はゼロですか?

 お父さんはゼロでいい。疲れているお母さんの肩をもんだりとか、お母さんが疲れている時に「ちょっとお茶飲んだら?」とか声をかけたりすればいい。お父さんは10割の中には入り込まず、プラス1割みたいな感じがいいと思います。

 我が家は、成績表も夫には見せていませんでした。私は、子どもを一切比べないと腹をくくっていましたが、夫はそこまで思っていない。「これは前より悪いじゃないか」とか何げなく言ってしまう。そうすると、子どもはやはり傷ついてしまうんです。

受験生は恋愛禁止?

 ――「受験生は恋愛禁止」との発言は問題になりました。

 炎上しましたね。ただ、受験までの持ち時間はみんな一緒。そこで問題を解くか、恋愛をするか、曲がりなりにも人生の方向が決まる。目標達成と思ったら、高3の1年くらいは他のことを我慢することは大事です。

 ――高3だけ?

 「恋愛はダメ」で炎上しましたけど、高2までは、定期テストを押さえておけば、あとは本人の自由。「ダメ」は高3だけ。うちの子たちがこそっと恋愛していたかは、うーん、どうだろう。

反抗期なくていい?

 ――お子さんに反抗期はなかったとか。

 なかったです。

 子どもは体が小さいだけで、精神的には大人と同じように考えるべきなんです。例えばテストの点数。30点だったら、お母さんは「何この点数!」と言って怒るけど、点数を上げる具体的なビジョンは示さない。自己満足で怒っているだけ。そのように、子どもにとって理不尽の種をお母さん方はいっぱいばらまいています。その種が大きく育ったのが反抗期。種がなければ、反抗しません。

 ――でも、親が怒りたい時はありますよね。例えば、ものすごく順位が下がった時とかはどうされましたか。

 怒らず、下がった理由を子どもと精査します。

 子どもは「何やっているの!」ってキーってなる人には心を開きません。それは、親子という関係に甘えているのです。他人同士だったらそんなことしないでしょう? 感情的にしかったり、約束破ったことを悪く言ったりするのは、子どもが自分の前から決していなくならないと分かっているからやっていること。それは親が、親という立場で上から子どもを見ているからなんです。

 長男が赤ちゃんの頃、何があっても子どもの立場に立ち、子どものことを同じ人間として大事にしたいと思っていました。

失敗経験いらない?

 ――そもそも中学受験をしたのはなぜですか?

 結婚前、大分県内の高校で英語を教えていました。中3から高1になると、英語はレベルがパーンと上がり、英語が好きだった子も嫌いになっていました。

 頭が柔らかい中学生の時に、とりあえず単語だけでももっと覚えていたら楽なのに、と思っていたんです。英語から考えたら、中高一貫が合理的だと思いましたね。

 ――海外の大学への進学は考えなかった?

 考えなかったです。大学生は、学生として守られつつ日本社会を学ぶ時期。日本人として最低限のことは身につけてほしい。その後は、「日本はやはり狭い。大学院は絶対に海外へ」と言っています。

 ――子どもの遅刻や忘れ物が多い時、どうすればいいのか。テレビ番組で教育評論家の尾木直樹さんと議論になりました。若い頃に失敗や挫折をした方がいいと言いますが。

 それは違います。失敗しないようにしてあげるのが親の務め。学校で忘れ物をしないようするのも、親の役目。「先生に怒られて反省すればいい」という人がいますが、先生が適切な怒り方をしてくれるとは限りません。

 小さい頃から失敗を重ね、怒られてきた人はめげないと言う人がいますが、それは逆です。その子の人生は、ずっと失敗続きとなります。いつも、何度も怒られたら立ち直れなくなる。落ち込んだ時に立ち直る力は、成功体験なんです。

なぜ医学部なのか?

 ――4人ともなぜ医学部だったのでしょうか?

 上2人は、医者になりたくて入ったわけではありません。18年間勉強してきた集大成として、自分がどこまで通用するか、一番難しいところ受けてみたい、ということで東大理Ⅲを受け、通りました。

 ――医師になりたいから医学部、という選び方ではないのですか?

 17、18歳で、自分の人生でやりたいことを具体的に決定するのはなかなか難しい。どのような仕事でも、最後は人間の総合力ですから大事なのは偏差値だけではありません。しかし、命を直接に扱う医者は、知識の精度が高い方がいい。偏差値の違いとは、物事の理解の精度が違うということです。

 偏差値の高さで、まず医学部を選ぶのは批判に値することではありません。子どもたちも、医学に貢献したいという思いが強くなったようですから、頑張って欲しいと思います。

 ――「母親の自己実現の押しつけ」といったネット上の意見もあります。

 それは、残念ながらよくありますね。そもそも、私の「自己」をどのくらい理解しているのか不思議です。未知数の子どもの将来に母親の「自己実現」をかけるなんてものすごいリスキーなことなんです。そんなことは、考えたこともないです。

 私は毎日子どもの笑顔を見たかっただけ。学校に笑顔で行くためには、授業が分かってテストの点数がよく、友達と遊んで楽しいことが大事です。それで、学力をつけさせたのです。

 ――医者として働かなくてもいい?

 将来のことは、それぞれに任せています。自分の努力でつかんだ資格や学歴などは自由に使ったらいいと話しています。(山下知子、岩田智博)

     ◇

 九州・山口では9月から、各地で佐藤ママによる教育講演会が開かれている。無料。平日10~17時に電話で申し込む。日程は以下の通り。

【9月】

 16日13時半、周南市文化会館(山口県周南市徳山5854の41)。山口県朝日会(083・228・0312)。

 18日11時、佐賀県教育会館(佐賀市高木瀬町東高木227の1)。福岡・佐賀朝日会(092・554・9010)。

【10月】

 14日15時、原爆資料館ホール(長崎市平野町7の8)。長崎県朝日会(095・813・3550)。

 15日11時半、セントラルホテル佐世保(長崎県佐世保市上京町3の2)。長崎県朝日会(095・813・3550)。

【11月】

 18日14時、下関勤労福祉会館(山口県下関市幸町8の16)。山口県朝日会(083・228・0312)。

 19日正午、カリエンテ山口(山口市湯田温泉5の1の1)。山口県朝日会(083・228・0312)。