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 日本の人間国宝制度を参考に創設されたフランスの人間国宝ら15人の作品約230件を集めた「フランス人間国宝展」(9月12日~11月26日、朝日新聞社など主催)の開幕に先立ち、会場の東京・上野の東京国立博物館表慶館で9月11日、内覧会があった。フランス側が「日本への贈り物として見てほしい」と自負する日用の美と技を、間近で堪能できる催しだ。

 メートルダール(Ma●(iに^〈曲折アクセント〉付き)tre d’ Art)。フランス語の「アート」には「美術・芸術」のほか「技」という意味もある。直訳すれば、「美・技の巨匠」となる称号は、フランス文化省から伝統工芸の最高技能者に与えられる。1994年の創設以来、127分野の約180人を認定してきた。対象ジャンルは、今回出展した作家に限っても、陶器やガラスなどのほか、傘や扇、メガネ、紋章細工、革細工などと幅広い。

 今回のキュレーターで在日フランス大使館の文化担当官を務めたこともあるエレーヌ・ケルマシュテールさんは「日本と違って、フランスでは伝統工芸の技が滅びかねないという危機感が薄い。メートルダール創設は技の保護が大きな目的」と説明する。このため、認定者には弟子の育成費用を3年間支給している。

 会場は明治末の洋風建築を代表する表慶館。照明を落とした展示室内で、陶器や革のハンドバッグ、折り布などの作品がスポットライトに浮かぶ。ケースには入れず、手に取れるような距離で鑑賞できる。幻想的ともいえる展示空間をデザインしたのは建築家リナ・ゴットメさん。日本での開催にあたり、谷崎潤一郎の「陰翳礼讃(いんえいらいさん)」を意識してあえて光と影を強調したという。「西洋と日本の文化を反映した建築物のなかで、作品のオーラを取り出す試みです」と話した。

 会期中、日仏の人間国宝らによる座談会などがある。月曜休館。一般1400円など。問い合わせはハローダイヤル03・5777・8600。公式サイトはhttp://www.fr-treasures.jp/別ウインドウで開きます

■探究心と情熱

 会場に入ると、まず、約100点の陶器が迫ってくる。「開運!なんでも鑑定団」でも話題になった「曜変天目」を40年以上探究してきたジャン・ジレルさんの作品だ。

 12~13世紀の中国で作られ、独特の模様や色を持つ曜変天目は製法が一切伝わっておらず、再現不能とされる。ジレルさんは、作品を曜変天目に近づけるため、自前の窯を作り、熱による石の変化を調べるため火山を巡るなど研究を続けてきた。日本や中国、台湾の作家とも交流を持っている。今回は、そうした活動の集大成として出展した。

 日本と違ってお茶の文化がないフランスでは陶器をつくる人が少なく、この分野でメートルダールになったのはジレルさんが初めて。「陶器というジャンルがもらったのだと思えてうれしかった。責任を感じ、弟子の育成にも努めている」と話す。

 傘を差すというより、絵を差すような気にさせるファッショナブルな雨傘・日傘を出品したのはミシェル・ウルトーさん。子どものころからおもちゃより傘が好きで、古い傘をもらっては修理していたという。2千本以上を所有するコレクターでもあり、デザイン性にすぐれたフランス傘の伝統を吸収してきた。ウルトーさんが使う生地はシルクが中心で、柄の木も一本一本こだわって選び抜くという。

 伝統的な傘がよく使われたのは1970年代までで、日本と同様現在のフランスではビニール傘全盛という。「大量生産品を粗末に使ってすぐ捨てるのは、環境に負荷をかける行為で心が痛む」と情熱的にまくし立てた。2013年にメートルダールに認定された。「高いクオリティーの傘を長く使うことが良いのだと認められた気がした」と話した。