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 スタジアムやアリーナが、情報通信技術(ICT)で進化している。集客や売店での売り上げ増につなげ、施設の経営を改善する狙いもある。東京五輪を見据えて政府がスポーツの産業化を後押しするのも、追い風にしている。

 プロ野球、東北楽天ゴールデンイーグルスの本拠地・コボパーク宮城(仙台市)。昨年、パナソニックと協力して、観客の持つスマートフォンを使ったサービスを導入した。

 観客は、球場内のカメラが撮った映像を、手もとで見られる。外野席からでも選手の表情が分かるし、得点シーンを見逃してもリプレー動画を確認できる。売店にはスマホから食べ物や飲み物を注文できる。できあがると通知が来るので行列に並ぶ必要がない。

 球団の渡辺太郎・コンテンツ部長は、「野球に詳しくない人や子どもにも楽しんでほしい」と話す。

 2月に開かれた冬季アジア札幌大会の会場。観客は、アイスホッケーの試合では、アリーナ内のカメラから好きな1台を選び、スマホで見ることができた。カーリングでは、真上から見たストーンの配置も確認できた。システムを手がけたNTTグループの担当者は、「スタジアムでの観戦は解説が聞けないなど、テレビ観戦に比べて不利な点も多かった。そこをICTでカバーできれば」と話す。

 ソニーは、テニスの「チャレンジ制度」など、審判補助システムに力を入れる。複数のカメラで、ボールがラインを割ったかを瞬時に解析する技術だ。2012年にはFIFA(国際サッカー連盟)のゴール判定にも採用された。

 富士通はレーザーセンサーを使って、体操競技で選手の演技を自動採点する仕組みを開発中。東京五輪での採用をめざしている。

 NECは顔認証の技術を生かし、チケットや会員証を提示せずに、歩きながら「顔パス」で競技場内に入場できる仕組みを開発。各地で実証実験を重ねている。混雑の防止やセキュリティーの向上に役立つ。

■五輪見据え、政府後押し

 スポーツ施設はICTの活用で、経営改善を狙っている。スポーツ庁によると、2002年のサッカー日韓ワールドカップで使われた国内10の大規模スタジアムのうち、14年度に黒字だったのは、Jリーグだけでなくプロ野球の本拠地も兼ねている札幌ドーム(札幌市)だけ。維持管理費がかさみ、自治体が支払う「指定管理料」で穴埋めしている状況だ。

 厳しい経営はサッカー場だけではない。ただ、00年代半ばから施設運営の民営化が進むと、飲食店の拡充や、多様な座席を準備するなど、「観客目線」の取り組みも目立ってきた。ICTを使った様々な施策も、その延長線上にある。

 政府は昨年、東京五輪をきっかけに、スポーツの市場規模を12年の5・5兆円から25年までに15兆円に拡大する目標を掲げた。スタジアム・アリーナ改革も柱の一つで、施設側や、施設に技術を提供するメーカーもチャンスと捉える。

 スポーツ経営に詳しい早稲田大学の間野義之教授は、「欧米では会議場や商業施設を併設させるなど、施設を多機能化させることで収支を維持している。官民が連携し、街づくりの中に位置づけていくことが大切だ」と話す。(新田哲史)