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 国連安全保障理事会が11日に採択した対北朝鮮制裁決議は、北朝鮮への石油輸出を3割減らすほか、主要な外貨収入源である同国製繊維製品の輸出禁止も盛り込んだ。これで北朝鮮の輸出産業の9割が制裁対象となった。米国は当初示した案から譲歩したものの、核実験から8日後の採択という迅速さを重視。中国も北朝鮮の体制が揺らがない線を守りつつ、石油の輸出制限も受け入れた。

 北朝鮮に対する安保理制裁決議は8月に続き、9回目。制裁強化に慎重だった中国とロシアも賛成し、全会一致だった。米国のヘイリー国連大使は「核を保有する北朝鮮を決して認めない。これまでよりはるかに強い決議だ」と語り、北朝鮮が核とミサイル開発に不可欠な石油と資金を遮断するとの狙いを説明した。

 米国は「石油は核兵器の製造、運搬の原動力」(ヘイリー氏)として、石油禁輸を重視していた。6日に示した当初案では全面禁輸としていたが、北朝鮮の体制が揺らぐことに反対の中国との調整を経て譲歩。ガソリンや軽油などの石油精製品は200万バレル、原油は現行レベル(400万バレル)の輸入上限を設けた。石油精製品は約半減となる。

 米政府当局者によると、北朝鮮が得る石油全体の3割を遮断出来るとしているが、北朝鮮軍の活動や核・ミサイル開発に打撃になるかは疑問の声もある。ただ石油が初めて制裁対象となったことで、北朝鮮が今後挑発行動を続けた場合、さらに踏み込んだ禁輸措置を取る道が開けたと言える。天然ガス液は当初案通り、全面禁輸とされた。

 一方、北朝鮮の外貨収入源を奪うため、北朝鮮製スーツなどの繊維製品が全面輸出禁止となった。米政府によれば、繊維は2016年の輸出全体の約27%を占め、年7億6千万ドル(約830億円)を稼いでいた。石炭や鉄、海産物などの天然資源は過去の決議で制裁対象となっており、主力産業で繊維が唯一残っていた。

 北朝鮮がロシアや中国などに派遣する労働者は、現在の契約が終われば労働ビザの発給が禁止される。推計9万3千人が国外で働いており、年5億ドルの外貨収入があったとされる。

 11日の安保理では、理事国の間から決議採択を歓迎する声が上がる一方で、北朝鮮との対話が必要だとの訴えも相次いだ。中国の劉結一・国連大使は「関係方面が迅速に対話を復活させるべきだ」などと求めた。また、スウェーデンの代表は「解決策は平和的なものでなくてはならない」などと述べ、国連事務総長の仲介の可能性なども探るべきだとの考えを示した。

 安倍晋三首相は12日、記者団に「格段に厳しい制裁決議が迅速に全会一致で採択されたことを高く評価する」と語った。菅義偉官房長官は同日の記者会見で、北朝鮮への原油・石油の供給制限に踏み切るのは初めてで、供給量は3割減るという試算を強調。中国やロシアを含めた各国に決議の完全履行を求めた。

 官邸幹部は、北朝鮮からの石炭輸出が段階的に全面禁止になった経緯と重ね、「完全に同じ流れだ」と指摘。北朝鮮がさらに挑発行為に出た場合には、原油・石油の供給を全面禁止にする道筋ができたという認識を示した。

 河野太郎外相は同日、訪問先のエジプト・カイロで記者団に、北朝鮮の出稼ぎ労働者に対する雇用契約の更新禁止について「個別に各国に、受け入れている北朝鮮の労働者を本国へ帰す措置を取るように申し入れをしたい」と語った。

 一方、ロイター通信によると、ジュネーブの国連軍縮会議で12日、北朝鮮の代表者が「既に完成の域に達した北朝鮮の核開発を逆戻りさせようとする米政府の方針は対立を過熱させている」と批判。「米国は経験したことのない痛み」に直面すると警告した。(ニューヨーク=鵜飼啓