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■デジタルトレンド・チェック!特別版

 9月12日(日本時間13日未明)、米アップルがiPhoneの新製品を中心とした発表会を開催しました。今年の会場は新社屋「アップルパーク」。発表は新製品だけでなく、その中に作られた「スティーブ・ジョブズ・シアター」(写真1、2)のお披露目も兼ねていました。iPhone登場から10年。アップルという会社のビジネス的にも、私たちのライフスタイル的にも、そろそろ「次へのステップ」が欲しいところではあります。では、アップルはどのような回答を示したのでしょうか。(ライター・西田宗千佳)

■アップルウォッチ、LTE内蔵で「iPhoneがない時も便利に」

 製品として最初に発表されたのが「アップルウォッチ」です。新製品「シリーズ3」で、携帯電話ネットワーク接続ができる「セルラー」モデルを用意しました(写真3)。

 アップルウォッチも含め、多くのスマートウォッチの弱点は「スマホと共に持ち運ばねばならない」ことでした。例えばジョギング中のように、荷物をできるだけ減らしたい時などは、スマホとスマートウォッチの両方を身につけておく(もしくはごく近くに置く)のは、それなりに大変なものです。しかし、アップルウォッチが携帯電話ネットワークに直接つながってiPhoneなしでも動くなら、荷物は簡単に減らせます。

 そうなると、もちろん気になることが。「電話番号をもう一つ持つのか」「そうするとかなり通信料金が上がってしまうのではないか」ということです。

 ここでアップルは、携帯電話事業者と協力し、「iPhoneとアップルウォッチをひも付ける」ことにしました。技術的詳細は省いて簡単に説明しますが、携帯電話事業者側で、「自分の持っているiPhoneの番号」と「アップルウォッチの番号」をひも付ける形になります。もちろんアップルウォッチから通話できるのですが、電話を「着信」する時にはどうでしょう? iPhoneに電話がかかってくると、自動的に「iPhoneとアップルウォッチが同時に着信する」のです。いままでのように、iPhoneとアップルウォッチが近くにあるときはあまり変わりません。でも、両者が離れていると、いままでとはまったく違う状態になります。

 例えば、家にiPhoneを置いたまま、アップルウォッチだけをつけてジョギングに出たとしましょう。iPhoneに電話がかかってくると、自分がつけているアップルウォッチで着信できます。これは、メールやメッセージでもまったく同じ。家にiPhoneが起きっぱなしでも、iPhone向けの電話やメッセージを、身につけたアップルウォッチで送受信できるのです。

 また音楽についても、アップルのストリーミング・ミュージックサービスである「アップルミュージック」が、アップルウォッチだけで使えることになります。アップルウォッチに音楽を入れておく必要はなく、ネットワーク経由で、常に4千万曲の中から好きな曲を聴けるようになります。

 こうしたことは、iPhoneを肌身離さず持ち歩く人には、あまり意味がないことかも知れません。しかし、腕時計のような身につけておく機器で、「スマホを持っていない時、あるいは持っていることができない状況」でも、「スマホの能力を使える」ことには意味があります。実際、フィットネス用途でアップルウォッチを使っている人は、「その用途にスマホは邪魔である」から選んでいるわけです。

 すなわち、アップルからの「iPhone10年目のひとつの回答」は、「iPhoneを持っていない時に、その能力を使えるサポートデバイス」を用意することであり、それが新アップルウォッチだった、ということです。

 当然、こうしたシナリオを現実のものにするには、「通信料金」の問題が出てきます。NTTドコモは「ワンナンバー」、KDDIは「ナンバーシェア」というサービスを開始し、この問題に対処します。要は、月額350円から500円(事業者により異なる)を支払うことで、アップルウォッチとiPhoneの通信・通話料金を「シェア」するのです。そうすると、普段の通信料金に数百円追加するだけで、アップルウォッチの通信機能が使えることになります。

 実はアップルウォッチ・シリーズ3のセルラー機能は、通信速度の遅い「LTEカテゴリー1」という通信を使います。電話や音楽、メッセージングなどには十分ですが、動画などを流すことは想定していません。このために、消費電力は低く、LTEの入ったアップルウォッチでも、18時間のバッテリー動作時間が維持できています。

 こうした「LTEをうまく使うコンパニオンデバイス」は、今後色々登場することでしょう。アップル以外も考えていたことではありますが、アップルウォッチの需要が見えてきた今、うまく特性を合わせて製品化した、と言えるでしょう。

 実際、アップルウォッチへの市場の反応は、決して悪くないようです。たしかにアップルウォッチを含むスマートウォッチは、いきなりスマートフォンを置き換えるほどのヒットにはなりませんでした。とはいえ成果がなかったわけではありません。2014年9月の発表から3年が経過し、アップルは「前年比で50%成長」「腕時計市場でトップ」と好調さをアピールしています。絶対数が公表されていないので評価しづらい指標ですが、フィットネスなどの需要を軸に利用者数定着への道を歩み、それなりの数量を販売するビジネスになったのは間違いないようです。

■アップルTVの4K化は「ようやく」

 次の提案が「アップルTVの4K化」です(写真4)。

 いまや、リビング向けに販売されるテレビの多くが4Kになっており、アップルTVの4K化も必然と言えます。アップルは解像度を上げるだけでなく、色の再現性や明るさのダイナミックレンジを上げる「HDR」技術も導入します。こちらも、テレビでの導入が進んでおり、画質向上に有効であるのは間違いありません。

 実際のところ、テレビ向けの映像配信では、アップルは後手に回っています。ネットフリックスやアマゾンが「定額制見放題」の配信を行い、ビジネスモデルの面で先行しているだけでなく、4K+HDRの高画質コンテンツ提供でも、彼らの後塵(こうじん)を拝していました。特にアメリカ市場では、映像配信がすでに当たり前になっており、人気のある視聴機器であるアップルTVも、高画質化が必須だったのです。

 22日の発売に合わせ、アメリカなどでは、アップルTV 4Kで視聴できる4K+HDRの映画などの配信が始まります。2K版と4K版の価格は「同じ」で、しかも、過去にアイチューンズ・ストアで映画を買った人の場合、2K版から4K版への「アップグレード」も無料かつ自動です。要は、配信が「4K+HDRが基本」になるわけです。

 ただし日本については、アメリカのように、「発売と同時に4K+HDRが基本」になるわけではないようです。「2Kと4Kの価格が同じ」「アップグレードは自動かつ無料」という方針はアメリカと同じだそうですが、コンテンツについては、徐々に増やしていく予定だと言います。

 アップルは映像配信において、そろそろ思い切ったビジネス戦略の発表が必要だろう……とは感じます。一方で、テレビで映像配信を見る機器として、アップルTVは依然魅力的です。今回は「必要とされるところに手を打った」上で、「映像配信としての魅力も失わないよう努力する」状況を示しているのかな……と考えられます。

■一見コンサバの中、「AR最適化」で攻めるiPhone 8

 さて、ここからは、お待ちかねの「iPhone後継機」の説明です。

 まずティム・クックCEOが発表したのは「iPhone 8」「8 Plus」でした(写真5)。

 iPhone 8は、4.7インチの「8」と5.5インチの「8 Plus」の2ラインアップ構成で、このあたりiPhone 7以前の製品に非常に似ています。デザインテイストを変える目的もあり、アルミボディーから、表裏両方ガラスへと、見た目の印象も変化しています。

 とはいえ、「デザインに大きな変化」がなく、後述するように「さらに上のモデル」もあるため、「iPhone 8シリーズはインパクトに欠ける」と思うかもしれません。もちろん、カメラもディスプレーも動作速度もきちんと進化しており、触ってみれば違いはわかります。ですが、やはり多くの人にとっては、「デザイン」や「特徴的なデバイス」の面で違いがないと、変化がわかりづらいのも実情です。

 ですが実際には、ひとつ大きな布石を打っています。それが「AR(オーグメンテッドリアリティー、拡張現実)」です(写真6)。ARは、現実にCG映像を重ねることで、そこには存在しないものがあたかも「その場所にある」ように見せるもの。iOS11には「ARKit」という技術が搭載され、iPhone 6s以降の製品の場合、iOS11に無償アップグレードすれば、ARが使えるようになります。現状でのARKitもなかなか高品質な技術なのですが、iPhone 8シリーズでは、カメラやモーションセンサーなどを「ARに最適化」(フィル・シラー上級副社長)することで、より精度を高めようとしているのです。

 ARは決して新しい技術ではなく、アップルの発明でもありません。しかし、新機種で最適化を進め、過去の機種でもサポートして「大きなアプリの市場を用意」した上で展開するのは、非常にうまいやり方です。結果的に、iOS11が出てiPhone 8シリーズが市場に出る頃には、多くの人にとって目新しい「ARという要素」を持ったアプリが多数出回ることになります。iPhone 6s以前のモデルを使っている人、そして、それ以降のモデルでも買い替えを検討している人にとっては、魅力的な一押しになる可能性があります。

 もちろんそのためには、アプリがたくさん必要ですし、精度アップがどのくらいなのかを確認する必要もあります。そうした部分は、また改めてチェックし、お伝えします。

■顔認識とディスプレーで変革、「iPhone X」の強みは

 iPhone 8の発表後、ティム・クックCEOはお約束のフレーズを発しました。「ワン・モア・シング(あとひとつ……)」というヤツです。

 クックCEOは、「ワン・モア」にふさわしい要素として、次のひとことを挙げました。それが「スマートフォンの未来」です。iPhone 8が今のスマートフォンの進化系だとすれば、もうひとつ「未来を指向したiPhone」を用意したかったわけです。そのiPhoneが「iPhone X」。今年は秋の新iPhoneが、都合3ラインアップになりました(写真7)。ただし、発売時期がiPhone Xのみ異なります。iPhone 8シリーズは9月22日から発売ですが、iPhone Xは11月3日発売です。

 iPhone Xの最大の特徴は、画面を16:9からより縦長なものにし、「5.8型」に拡大したことです。ディスプレーに有機ELパネルを採用、ベゼル(枠)部分を狭くし、持ちやすさを維持した上で、表示領域を広くしています。結果的に、iPhoneの伝統がひとつ消えました。「ホームボタン」がなくなったのです(写真8)。

 現在のiPhone・iPad…

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