【動画】帰国15年 未解決の拉致問題について語る蓮池薫さん=角野貴之撮影
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 北朝鮮が日本人の拉致を認めた日朝首脳会談から17日で15年。帰国した拉致被害者の一人、蓮池薫さん(59)が16日、新潟県柏崎市で朝日新聞のインタビューに応じた。「日本で待つ家族が生きているうちに被害者を帰さないと解決の意味がなくなる。政府はいま動かないと手遅れになる」。北朝鮮がミサイル発射や核実験を繰り返す中、日本政府が拉致問題解決に向けた独自策を打ち出すよう求めた。

 国連の北朝鮮制裁決議が採択されるなど、「今は国際的に圧力の局面にある」。蓮池さんはそうみる一方で、「いつかは対話の局面になる。その時に備え、日本は水面下で拉致問題解決を求める姿勢を伝える努力が必要。見返りとして、軍事に振り向けられない経済協力のあり方も検討しておくといい」と語った。

 そのために、「安倍晋三首相には交渉の先頭に立ってほしい。核やミサイルの問題ではトランプ米大統領のメッセージを直接伝えつつ、拉致問題を持ちかけたらどうか。拉致問題解決なくして国交正常化も経済協力もない、との姿勢を強調すべきだ」と提言した。

 金正恩(キムジョンウン)・朝鮮労働党委員長との間に「交渉の余地はある」とみる。「先代(金正日(ジョンイル)総書記)が『被害者は死亡』とした報告を白紙にもできるということだ」。他方で、被害者や家族の高齢化が進む。「拉致は国家問題であると同時に家族の問題。家族が再会して一緒に暮らすためには、いまが切羽つまったぎりぎりの時期にある」と語った。

 蓮池さんは大学3年だった1978年に拉致され、24年後に45歳で帰国した。現在は新潟産業大准教授として、北朝鮮で身につけた韓国語を教える。自身で翻訳や講演に取り組む。ともに拉致され帰国した妻祐木子さん(61)や両親らと郷里の柏崎市で暮らす。子どもたちも就職や研究など自分の道に進んだという。「帰国後、自分の才能を生かして新しい人生を精力的に生きる。そんな夢を実現するには多くの時間がいる」

 同じく拉致被害者の横田めぐみさん(拉致当時13)については、「語学をはじめ才能にあふれた人だった。帰国すればその経験を生かせる貴重な存在になれると思う。早く救出しなければならない」と述べた。(渥美好司、編集委員・北野隆一

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 〈北朝鮮による拉致問題 1970~80年代、不自然な日本人の失踪が相次いだ。警察の捜査や大韓航空機爆破事件実行犯として逮捕された金賢姫(キムヒョンヒ)元死刑囚らの供述から、北朝鮮による拉致の疑いが浮上。97年に横田めぐみさん拉致疑惑が報道と国会質問で表面化し、同3月に「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」(家族会)が結成された。

 02年9月17日の日朝首脳会談で金正日(キムジョンイル)総書記が初めて拉致を認め謝罪。翌月15日に蓮池薫さんら被害者5人が帰国し、04年には蓮池さんの家族らも帰国した。

 日本政府は帰国した5人を含め17人を拉致被害者と認定しているが、北朝鮮は5人以外は「死亡」「未入境」と主張している。北朝鮮は14年に拉致被害者を含む再調査を約束(ストックホルム合意)したが、16年の核実験や弾道ミサイル発射で日本が独自制裁を決めると、調査中止を発表した。