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 薬が多すぎると、副作用のリスクが高まるほか、国や健康保険の薬剤費にも響きます。高齢化が進み、患者さんの3~5割が、5種類以上の薬を処方されています。なぜ、多くの薬が処方されるのでしょう。必要な薬は使いつつ、弊害は改善できるのでしょうか。

■東京大学教授(加齢医学) 秋下雅弘さん「かかりつけ医に情報一元化を」

 1人の患者さんに、多くの種類の薬が同時に処方されている状況を多剤処方(ポリファーマシー)と呼びます。種類が増えると副作用が出やすく、いろんな病気を抱えて多剤処方になりがちな高齢者で特に問題視されています。

 私たちの研究で、常用薬が6種類を超えると副作用が出やすくなる傾向が確認できました。ほかにも、5種類以上で転倒しやすくなる、消化器への影響で低栄養状態になるリスクが高まると報告されています。薬の相互作用によるものでしょう。そのため、あくまで目安ですが、5種類程度に抑えることを提案しています。

 ただ、処方する薬の種類を減らせばいい、という単純な問題ではありません。高血圧に糖尿病、心臓にも持病を抱える患者さんの場合、10種類の薬が適正だということもあります。要は、それぞれの患者さんに合わせ、適正な処方を追求することです。

 抱える病気が多い人ほど、多剤処方の可能性は高まります。高齢者に薬の副作用が出ないようにするには、効果と副作用のリスクをはかりにかけ、服用する薬に優先順位を付ける必要があります。認知機能に問題があり、高血圧で糖尿病でもある患者さんがいたとすれば、認知機能を下げないことを優先し、他の病気の服薬基準を少し緩める、といったようにです。

 多剤処方で副作用が出るメカニズムは解明されていませんが、きっかけになりがちな薬剤はあります。日本老年医学会は2015年に医師、薬剤師、看護師向けに「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」をまとめ、「特に慎重な投与を要する薬物」と「開始を考慮するべき薬物」を載せました。

 例えば、うつ、吐き気、精神疾患、不整脈など広い範囲で使われている「坑コリン系薬剤」は、副作用で認知機能を低下させる恐れがあります。複数の病院に通う患者の処方の全体を知らないと、重複投与につながります。

 多剤処方の解消に向けた一案として、かかりつけ医に薬の情報を集約してもらい、処方を一元化することが考えられます。患者さんの病気をよく知るかかりつけ医なら専門医の知見を参考にしつつ、最適な薬剤処方を選びやすい。

 しかし、日本ではかかりつけ医の制度が完全には整っておらず、役割が明確ではありません。患者は、専門分野の診療科を自由に受診でき、専門医は目の前の患者さんの病状に合わせ、最適と思われる薬をそれぞれに処方します。それが、循環器と神経内科と泌尿器科とという具合に重なり、医師同士の情報の連携がないと結果として多剤処方になってしまいます。

 患者さんの側にも要因がありま…

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