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 ミャンマー国内で「不法移民だ」と厳しい視線を向けられる少数派イスラム教徒ロヒンギャ。大半は国籍を認められていない。一方、国勢調査によると、同国には国籍を持つ200万人超のイスラム教徒がいるとされる。彼らはロヒンギャ問題をどう見るのか。最大都市ヤンゴンでイスラム教組織の代表にきいた。

 アルハジ・エーリン氏はミャンマー・イスラミックセンター代表。教師でもあり、宗教と平和の問題に長年取り組んできた。アウンサンスーチー国家顧問の肝いりでコフィ・アナン元国連事務総長をトップとして2016年につくられたロヒンギャ問題諮問会議のメンバーでもある。

 エーリン氏は現状について、「ロヒンギャ問題の表層しか見ていない人たちが、一部の集団の政治的な戦略に踊らされている」と主張する。

 「軍政が都合良くロヒンギャの存在を利用してきた」。10年の総選挙では、軍政系(当時)の連邦団結発展党(USDP)が議席増のためにロヒンギャの候補を擁立。一時的な身分証で投票権も認めた。だが15年の総選挙ではロヒンギャに投票権を与えなかった。「ロヒンギャに反感を持つ仏教徒の票を得るための戦略」とエーリン氏はみる。

 「軍事政権時代に『国籍を認められたいなら書類を提出しろ』と言われ、出したものの返してもらえず、いまだに申請ができないロヒンギャもいる。そういう背景をわからず、排除を叫ぶ国民もいる」という。

 ミャンマー政府は今年8月25日、ロヒンギャとみられる武装集団が警察施設などを襲った後、「イスラム教徒テロリストの仕業だ」と繰り返し主張している。だがエーリン氏は「襲撃を肯定するつもりは一切ないが、テロとは一般市民の命を奪う行為。ロヒンギャが村人を殺したという明確な証拠は出ていない」と語る。

 村人が犠牲になる事件は、覆面などで顔を隠した集団の犯行が多い。武装集団は村人に紛れて暮らしているといい、「一部の人間が住民の恐怖心をかき立て、対立をあおるために暴力を働いている」という。

 アナン氏の委員会で現地調査した時、ロヒンギャ排斥を唱える仏教徒たちはプラカードを上下逆に持ってデモをし、傍らでは子どもたちがふざけ合っていた。「多くの人は、自分たちが何を主張しているのかわからず、対立のための運動に乗せられている」とエーリン氏は指摘する。

 どういった対応が必要なのか。多くのロヒンギャから国籍を「奪った」とされる1982年の国籍法について、エーリン氏は「国際的な基準を満たしておらず、再考すべきだ」という。だが今回の騒動の中で、スーチー氏らが国籍法見直しに触れると国内から大きな反発を受ける可能性がある。

 「まずは国際的な助けを得て、ロヒンギャに、そしてラカイン州で苦しんでいる全ての人に人道支援をすべきだ」

 一方、国際社会に対しても「ロヒンギャをただ『かわいそうな人たち』と決めつけるのは間違っている」とする。ミャンマー政府を批判すればするほど、武装集団に資金や人材が集まる、とエーリン氏はいう。「解決には法整備や地域の発展が必要で、長い時間がかかる。政府が正しい方向に向かわせるのが国際社会の役目だ」と話した。(ヤンゴン=染田屋竜太)

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