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 大阪府池田市の住宅街の一角にある国有地をめぐり、市と国の評価が大きく食い違っている。福祉施設の用地として市が借りると決まり、着工に向けて準備を進めてきたが、国から求められた賃料の予定価格は市の想定の約2倍で、定期借地契約を結べていない。「なぜそんなに高額なのかわからない」と市は困惑している。

 問題の国有地は、池田市五月丘3丁目のマンションや住宅が立ち並ぶ地区の一画にある。広さ2130平方メートルで、阪急池田駅から北東1・3キロにある。以前は産業技術総合研究所の官舎があった。現在取り壊されて更地になっていて、周囲をフェンスで囲まれている。

 市は2014年6月、財務省近畿財務局(近財)から、地元自治体として国有地の利用を希望するかどうか聞かれた。市は、近くにある知的障害者の通所施設「市立くすのき学園」が老朽化しているため、国有地への移転を希望した。

 交渉をへて15年10月、近財から国有地の処分相手になる決定を受けた。市は具体的に動き始め、17年度は実施設計費などに約1億3千万円を予算に計上。18年度に本格着工し、19年度の移転・開設をめざしている。

 ところが、今年8月、思わぬ事態になった。交渉が済み、あとは賃料を決めて定期借地契約を結ぶだけの段階だった。市が賃料の見積額を示して近財の予定価格(最低価格)以上なら賃料が決まる「見積もり合わせ」で、市は不動産鑑定士の評価をもとに5段階の賃料案を提示したが、予定価格に達しなかった。

 市によると、近財の担当者から「期待利回り(不動産の購入額に対する毎年の賃料収入の割合)の数字に2倍ぐらい開きがある」と指摘されたという。

 市が提示した5案で最も高い賃料は年間544万円。市は国有地周辺の公示地価や路線価などを踏まえ、出せる上限だとしている。市側の不動産鑑定士は「近財の設定した期待利回りは池田駅前の一等地の商業施設レベル。当該の土地にそんな率を設定することはあり得ない。高すぎる」と市に説明したという。

 すでに国有地の処分相手の決定を受けているので、賃料が折り合わなくてもすぐ決裂はしない。だが、定期借地契約を結ばないと工事に入れない。市は11月にも、本格着工に向けた擁壁工事に入る予定だが、ずれ込む可能性も出てきた。

 小松伸・市福祉部長は「国の予定価格は割高感が強い。できる範囲で歩み寄っていきたいが、税金を無駄に使えない。でも、計画を立てて積み重ねてきたものを、あまり軽々に諦めることもできない」と対応に苦慮している。

 近財の財務広報相談室は朝日新聞の取材に対し、「市と交渉中で具体的な回答は差し控える。予定価格は不動産鑑定士の鑑定書を徴したうえで算定し、適正と考えている。事務手続きは、全国共通の国有地処分ルールに基づき行っている」と文書で答えた。(永井啓吾)