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 シリーズ「負動産時代」で、管理費などの負担が重く、お金を払ってでも処分したい所有者が増えているリゾートマンションの問題や、所有者の意見が合わず老朽化対策ができない郊外の分譲マンションの問題を取り上げました。朝日新聞デジタルのアンケートでも多くの声が寄せられたマンションについて考えます。

■将来、処分できるのか

 シリーズ「負動産時代」や朝日新聞デジタルのアンケートに寄せられた声のうち、マンションに関するものを紹介します。

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●「利益を生まない不動産は簡単に負動産化することに、ちょっと恐怖を覚えています。自宅のほかに投資用のワンルームをいくつか所有していますが、『資産価値』のあるものでないと、と改めて思いました」(神奈川県・60代女性)

●「子どもに残せる財産と思い購入しましたが、それは親だけの夢であり、さらに1人になった親は不動産とともに子どもにはお荷物となりました。すべての処理が自らできるうちに処分し、都内に戻り賃貸マンションで暮らす方向で考えています」(山梨県・60代女性)

●「暴落したリゾートマンションでも管理費はバカにならない。親族はお金を払うことで負動産を手放した」(東京都・50代男性)

●「最近よく耳にするのは『住宅すごろく』の話だ。昔の『あがり』は庭付き一戸建てだったが、ここ数年は戸建てを売却し、駅近くの分譲マンションに移り住むのが『ゴール』らしい。少子高齢時代で、長生きする親の住居を子どもが当てにできず、子どもは自分で住居を探す。親の戸建ては不要になるという構図だ」(東京都・50代男性)

●「巨大マンション建設規制を厳しくすべきだと思います。大阪市はむやみに高層マンションが増えたために小学校がパンクしています。行政の怠慢の悪い例です」(大阪府・50代女性)

●「人口が減少していることや、災害で資産価値も維持できるかわからないので不動産を持つメリットはない。マンションの所有者が不明になると、影響の及ぶ範囲は一戸建てよりはるかに大きいと思う。更地にする費用をあらかじめ徴収することや、更地にした土地は国が無償でもいいので引き取る制度を検討するべき」(東京都・20代男性)

●「不動産の価値は場所。立地さえよければそれなりの収入は期待できるし、実際、23区内のマンションを保有しそれなりの収入はある。10年前に購入した時から『不動産に手を出すやつは馬鹿だ』的な論調もあるが、少なくとも自分はメリットを感じている」(東京都・50代男性)

●「近い将来マンションと賃貸アパートを相続しますが、私も兄弟も子どもがいません。将来は施設に入りたいと考えているので、身動きがとれるうちにどちらも処分したいけど、きれいさっぱり処分できるのか不安です」(埼玉県・50代女性)

●「実家は戦前からの持ち家で、借地の上に立っていた。人の勧めで借金して底地を買い、マンションを建てたがうまくいかず、10年前に手放した。今でも所有していたら借金が返せず、破産していた可能性が極めて高い。安易にアパートやマンション建設を勧める業者も少なくないと聞く。こちらも規制が必要だと思う」(大阪府・50代女性)

●「一戸建ての管理維持はマンションより時間とお金がかかると思う。不動産を持たない主義の40代が増加しているが、国民の多様性に対して土地税制が遅れている」(長野県・50代男性)

■管理組合、「放棄物件」増を懸念

 所有者が死亡したマンションの1室が相続放棄され、管理費などの滞納が積み上がり、ほかの所有者にも負担のしわ寄せがいきかねない――。そんな懸念に直面している管理組合があると聞き、取材しました。

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 神奈川県座間市の私鉄駅から徒歩7分の住宅街にある3階建てのマンション(29戸)で今年6月、80代の女性が孤独死しました。

 子どもはおらず、管理組合から親族に死亡を伝えました。親族は当初「相続する」と話していましたが、2カ月後に「相続放棄した。以後は無関係で」と連絡してきたといいます。女性が借金を抱えていたことが分かり、放棄に転じたようです。

 女性は死亡時、管理費と修繕積立金合わせて57万円を滞納していました。次の所有者が決まるまで、滞納額は積み上がっていきます。

 相続放棄されると、債権を持つ人などが裁判所に「相続財産管理人」の選任を申し立てることができます。管理人は物件を売却したお金で滞納分やローンの残額などを債権者に支払い、残れば国庫に納めるしくみです。

 しかし、この物件の場合は簡単にはいきません。

 マンションは築30年で、部屋はすべてワンルーム。所有者は原則住まず、賃貸して家賃収入を得る「投資用マンション」として売り出されました。女性はただ1人、所有者自身で住んでいました。売り出し価格は1部屋1900万円前後だったといいますが、今は「100万円台後半で売れれば御の字。室内で死亡した『事故物件』だから100万円を割っても不思議ではない」(地元の不動産業者)そうです。

 一方、管理組合が相続財産管理人を申し立てると数十万円から100万円程度の予納金(選任手続きなどの費用)がかかり、売れても滞納分を回収できない恐れがあります。

 新しい所有者は、「滞納」も引き継ぐことが法律で義務づけられていますが、100万円程度の物件では購入者に「それなら買わない」と言われかねません。

 結局、管理組合は、予納金を支払って管理人を立てた上で積み上がった滞納分を「損金」として処理せざるを得ないと考えています。4年前に大規模修繕があり、修繕積立金は340万円。理事長は「賃料が2万円程度では積立金の増額もできず、計画的な修繕を諦めるしかないかも」と肩を落とします。滞納が多いマンションは部屋の買い手がつきにくいともいわれ、1部屋の「負動産化」が、ほかの所有者たちに影響しかねない状況に、ある所有者は「購入額の割に月々の家賃が高い高利回り物件だと思って投資したのに」と嘆きます。

 横浜市戸塚区にある築34年のファミリータイプのマンション(56戸)も相続放棄に悩んでいます。昨年10月、独り住まいの86歳の女性が死亡しました。子どもはおらず、相続人となる親族13人全員の放棄の意思を確認するまで10カ月かかりました。

 女性に滞納はありませんでしたが、死亡後は、管理費と修繕積立金合わせて毎月2万3千円の滞納が積み上がっていきます。

 女性は住宅を担保に借金していたため、部屋が売れても、予納金と借金返済で相殺され、滞納分は購入者に請求せざるを得ない状況です。

 管理組合は潤沢な積立金を持ち、すぐに大きな問題にはならないと言いますが、理事長(83)は「次の所有者が決まるまで窓を開けて風を通すこともできない。劣化の原因となり、マンション全体の資産価値が落ちるのが心配だ」と言います。他の高齢世帯からも「子どもは相続放棄すると思う」との声を聞いており、今後「放棄物件」が増えていかないか心配しています。(畑川剛毅)

■「最後の心配」まで購入者に 米山秀隆・富士通総研主席研究員

 日本の居住形態としてマンションが登場したのは1950年代。建物の老朽化とともに住民の高齢化も進み、管理が行き届かなくなった物件が出てきつつあります。こうした「限界マンション」が10年後、20年後に急増する可能性があります。

 考えられる対策は三つありますが、どれも簡単ではありません。

 一つは大規模修繕を計画的に進めて建物の寿命を延ばすことです。ただ、資金計画の見通しの甘さから2回目以降の修繕費が足りなくなるケースをよく耳にします。

 二つ目は建て替え。各戸の所有者のうち5分の4以上の同意が必要になります。加えて、建物の容積率に余裕があり、建て替えで部屋を増やせる前提がないと住民負担が大きく、費用を賄えません。要は、増やした部屋が売れるだけの立地の良さがないと建て替えは難しいのです。

 三つ目は、建物を解体して敷地を売却する方法。これは被災や耐震不足の建物でない限り所有者全員の同意が必要で、ハードルが高くなります。いずれの方法も結局は「壊すとしたら誰がその費用を負担するのか」という問題に行き着くのです。

 そこで、マンション購入時点から解体費用を積み立てることが一つの解決策だと考えています。子が相続する、あるいは将来誰かが買ってくれることは約束されない時代です。普通の大きさであればマンションで1室、戸建てで1戸あたりの解体費は200万円くらいだと思います。人口減の時代、購入した人が建物の最後の心配までする、というのがポイントになるのです。

 また、マンションの相続放棄は、一戸建て以上に対処が難しい問題で、お金や時間がかかっても相続財産管理人を立てるしかないというのが現状です。(聞き手・大津智義)

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