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 自民党が、自衛隊明記など憲法改正を衆院選公約の柱にすると発表した。歴史的な節目だが、ノンフィクション作家の保阪正康さんは、自民党の重鎮だった故後藤田正晴氏なら今、こう語っただろうと言います。「君、どうなっているんだ、これは。論理も、歴史的感覚も、何もない。こんなことでいいのか」と。昭和史研究の第一人者に聞いた。

 ――自民党は2日、「国民の幅広い理解を得て、憲法改正を目指します」と公約の大きな柱の一つに盛り込み、「自衛隊の明記」にも言及しました。

 憲法そのものを語る前に、今度の選挙には、意外な側面があることをまずは知るべきです。米国のトランプ大統領の戦略を支持するかが問われている選挙だということです。トランプ氏は米国ファーストであり、北朝鮮の問題で軍事行動を起こす可能性がゼロではない。そうなれば、日本や韓国に少なからず影響する。そのトランプ氏に安倍首相は全く同調している。今回の解散は、支持率の推移を最優先する政治家の戦略のようにも見えますが、だとすれば、我々が見抜くべきは何か。トランプ氏の戦略を支持するか、が問われていると考えてもおかしくありません。

 ――憲法改正論議はどう見ていますか。

 総選挙で憲法改正が大きな争点となるのは、事実上初めてといえるでしょう。にもかかわらず、憲法が、ファッションや、雰囲気、ムードの中で論じられていることに危機感を持っています。憲法を論じる前に、必要な態度があるはずです。

 ――必要な態度、とは何でしょう。

 歴史や先達への畏敬(いけい)の念です。例えば、憲法が作られたプロセスがあります。米国の要求があったとはいえ、幣原喜重郎、吉田茂といった当時の閣僚ら憲法を生み出した人たちが、歴史的な使命感を背負って、どれだけ努力し、エネルギーを注いだのか知っているでしょうか。それに対して、「押しつけられた憲法」「占領憲法」と言い、安倍首相は「みっともない憲法」とさえ口にしましたが、そうした先達に失礼ではないでしょうか。

 太平洋戦争についても問われなければなりません。太平洋戦争で日本のように軍事が政治を主導した国はどこにもありません。世界各国は、第1次大戦で政治が軍事をコントロールする、シビリアンコントロールを学びました。武器の発達が人類史の滅亡につながりかねないと知ったからです。しかし、日本は学ばなかった。軍人に戦争をさせたら勝つまでやるんですね。それが「特攻」や「玉砕」であり、人を人とも思わない戦争でした。侵略か否かといった議論が目立ちますが、それ以前にこれは歴史的犯罪です。なぜあんな戦争をしたのか、問題点はどこにあったのか、その十分な検証はなされたでしょうか。

 ――安倍首相は今年5月、憲法9条3項に自衛隊を明記することを提案しました。公約では「自衛隊明記」だけ触れています。

 9条2項には「陸海空軍その他の戦力は保持しない」とあり、3項で自衛隊を明記すれば、論理矛盾が生じます。ではそれをどう解消するのか。安倍首相は全く論じないし、論じようとしない。私たちのものを考える力、歴史感覚をバカにしているんじゃないかとさえ思います。吉田茂、石橋湛山、大平正芳、田中角栄ら歴代の自民党の政治家たちは、あきれかえっているんじゃないでしょうか。中曽根康弘元首相の官房長官だった自民党の重鎮・後藤田正晴さんとは生前親しくしていましたが、後藤田さんならこう言ったでしょう。「君、どうなっているんだ、これは。論理も、歴史的感覚も、何もない。こんなことでいいのか」と。

 ――しかし、自衛隊が実際にあ…

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