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 英国の欧州連合(EU)からの離脱交渉で、28日に4回目の交渉が終了した。英国内のEU市民の権利保護などについては一定の前進をみたが、溝はなお残る。与党内での対立を抱えるメイ政権は依然、難しいかじ取りを迫られそうだ。

 「メイ首相の演説は交渉に動きをもたらしたが、まだ十分な進展があったとはいえない」。28日、ブリュッセルで4日間にわたる第4回交渉を終えたEUのバルニエ首席交渉官は、こう現状を総括した。「決定的な前進があった」と強調する英国のデービス離脱相との間に依然として溝があることをうかがわせた。

 離脱交渉では、①英国がEUに支払う分担金の額②英国に住むEU市民の権利の保障③EU加盟国のアイルランドと国境を接する英領・北アイルランドの和平合意の尊重、の3分野を優先的に議論している。自由貿易協定など将来のEUとの関係について早く交渉に入りたい英国に対し、EU側は3分野で「十分な進展」がない限り、話を先に進めないとしている。

 第4回の交渉では、これらのうち、特に市民の権利で進展があった。メイ氏が22日の演説で、EU加盟国の市民の権利保障を英国法で確実に担保することを約束したことなどが影響したとみられる。今回の交渉での英側の提案について、EU側は「市民に保証を与えるもの」(バルニエ氏)と評価した。ただ、EU側が求めているEU司法裁判所の司法権の行使については依然として開きがある。

 分担金についても、大きな対立が残る。

 メイ氏は移行期間中、英国に拠点を置く企業がEU単一市場で現在と同じ条件で活動できるよう求める代わりに、EU予算を支払い続けることを明言。英メディアによると、支払額について英国は200億ユーロを検討しているが、EU側は少なくとも600億ユーロを求めている。今回の交渉で金額のやりとりがあったかは不明だが、バルニエ氏は「(英国も含めた加盟)28カ国で決めた予算は、守られなければならない」と牽制(けんせい)した。

 EU側は10月のEU首脳会議で自由貿易協定などの将来の関係の協議に進むかどうかを判断する。それまでに残る交渉は1回だけだ。

 英国内では、移行期間を設けるなどのメイ氏の提案について、事業環境の急激な変更を避けられると経済界から歓迎する声が出る一方、強硬離脱派からは批判も上がっている。

 強硬離脱派は、離脱後に米国などEU以外の国々と自由貿易交渉を進め、取引を広げられると主張。演説には「移行期間がある限り欧州のルールに拘束され、世界中の市場との取引に進めない」(パターソン元環境相)との批判も出た。ただメイ氏の演説前に英紙への寄稿で「単一市場を利用し続けるためにこれ以上お金を払うべきではない」と牽制(けんせい)した強硬派の急先鋒(きゅうせんぽう)であるジョンソン外相は、演説に同席し、評価するコメントを出すなど、批判色を弱めている。

 勝てると踏んで、「EU離脱交渉に向けて信を問う」として6月の総選挙に踏み切った末に過半数割れに追い込まれたメイ氏。潜在的に政局の火種を抱え、EU側に歩み寄った今回の演説で行き詰まりを打開できなければ、立場は苦しくなりそうだ。(ロンドン=下司佳代子、寺西和男、ブリュッセル=津阪直樹)