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 時間に背中を押される政治の現実をつくづく思う。

 安倍政権への批判票の受け皿をめざして極めて急ごしらえの形ながらも「対抗軸」の姿は見えてきた。

 首相が臨時国会冒頭で衆院を解散し、短期決戦での政権維持に持ち込もうとするや、小池百合子・東京都知事が新党「希望の党」を立ち上げた。党勢低迷にあえぐ民進党は野党4党の共闘路線を放り出し、せかされるように多くがそこにのみ込まれそうだ。

 希望の党は自らの側近が進めていた新党の準備を小池氏が「リセット」して立ち上げたが、政策が抽象的でどんな党内論議を経たのかも見えてこない。耳目をひく「原発ゼロ」にしても具体的な行程の共有は後回しで、選挙目当ての野合との批判は免れない。

 新党の内実は注意深くみていく必要があるが、政権批判の世論を受け止めきれず国民の期待にこたえてこなかった野党が今回、ひとつの答えを出したことの意味は小さくないだろう。

 今回の衆院選は衆参2回ずつ計4回の国政選挙で勝利を続け、「1強」を築いた首相が初めて陰りの中で迎える国政選挙である。

 森友学園や加計(かけ)学園の問題では首相に対する世論の不信が深まった。憲法改正や「共謀罪」法など選挙で正面から触れなかった課題に選挙後に急ぎ取り組む政治手法も含め、5年近くの「安倍政治」が問われる。解散表明の記者会見で首相は「私自身への信任を問うことにもなる」と語った。

 7月の都議選で民進党は政権批判票を集めることができなかった。それだけに今回の衆院選では受け皿が必要とされ、小選挙区で野党勢力の「一本化」が進むのかが焦点だった。

 そうした対決構図が明確になったこと自体は評価できるが、もし新党が政権交代をめざすというのなら、首相候補を明らかにし、この国をどうしたいのかを国民に示す必要がある。

 朝日新聞の世論調査では首相が挙げる解散理由に7割が納得していない。「国難を乗り越えるため、どうしても今、国民の声を聞かなければならない」と言う首相はしかし、解散後に記者会見をして国民に説明を重ねることはしなかった。

 有権者を置き去りにした選挙になることだけは避けなければならない。(政治部長・佐古浩敏)