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 滋賀県彦根市の国の名勝・彦根城玄宮楽々園で江戸時代の御殿を使いながら営業してきた料理旅館「八景亭」が、11月末で営業を終えることが市などへの取材でわかった。市が返還を受けた後に実態調査し、保存や修復のあり方を検討するという。趣ある料理旅館は前身も含めて約130年の歴史に幕を閉じる。

 市によると、八景亭がある玄宮楽々園は二つの庭園の総称。彦根城北側に彦根井伊家の4代当主・直興(なおおき)が延宝5(1677)年ごろに造営。11代当主の直中が隠退した文化10(1813)年ごろに最大規模になった。玄宮園は大名庭園の部分で、楽々園はおもに居住空間の部分を指す。

 八景亭は、茅葺(かやぶ)きの数寄屋建築で床面積は547平方メートル。玄宮園を見渡すことができ、池にせり出すように作られた「臨池閣(りんちかく)」を中心に構成されている。最初の建造時期は不明で、増築も行われているが、臨池閣は江戸時代の絵図に描かれており、300年前の姿をとどめているとされる。幕末に大老を務めた井伊直弼が、接待に臨池閣を用いたとされる記録もある。

 八景亭の建物は、明治維新後にいったん民間に売却した井伊家が明治19(1886)年に買い戻した。その後、井伊家が料理旅館として民間に貸し付けたのが始まりだ。彦根城玄宮楽々園は1947年に市が井伊家から取得し、51年に名勝に指定された。

 竹中清登(きよたか)さん(67)は、祖父が34年に旅館を引き継いで以来、3代にわたって八景亭を経営してきた。江戸時代の建物で、庭を眺めながら琵琶湖の幸を味わえる旅館として人気を博してきた。竹中さんは昨年2月に病気で倒れ、建物の老朽化も進んでおり、「料理も作れなくなったし周囲にも迷惑をかける」と廃業を決めた。市は今後、保存や修復を検討する。

 八景亭は休業中だが、11月5日から再開。同30日で終了予定という。予約の問い合わせは八景亭(0749・22・3117)へ。(大野宏)