「宮さまと私が抱いたカナダの偉大さ、精神性を少しでも感じてもらえたらと思います」。高円宮妃久子さまは9月12日、在日カナダ大使館(東京都港区)でイアン・バーニー大使らを前にこうスピーチされました。故高円宮さまが集めた極北の民、イヌイットの彫刻作品を紹介する展覧会のオープニングでのことです。身につけていたネックレスやブレスレットはいずれもセイウチの牙で作られた北極圏を思わせるアクセサリー。宮さまと旅したカナダに対する久子さまの深い思いがうかがえました。

 高円宮憲仁さまは、スポーツ振興や国際親善に尽くし、2002年に急逝されました。学習院大学卒業後にカナダ・オンタリオ州のクイーンズ大大学院に3年間留学し、カナダの文化や同国北部に住むイヌイットへの理解を深められました。カナダ留学中に、イヌイットがつくる彫刻作品に出会い、その後久子さまと同国を訪れた際などに少しずつ作品を収集されたそうです。作品は宮邸で大切に飾られてきましたが、カナダ連邦結成150周年にあたる今年、久子さまがカナダ大使館に寄贈され、11月21日まで一般公開されています。カナダ大使館といえば、1984年4月23日、宮さまと久子さまが初めて出会った場所でもあります。カナダ、イヌイットと高円宮ご夫妻のゆかりについて深く取材したいと思い、今回、久子さまにお話をうかがいました。

 イヌイットの彫刻は、50年代以降、毛皮に替わり、生活を支える手段として盛んに作られるようになり、徐々に販路が拡大しました。玩具や生活用具をつくるため、動物の骨などを手で彫る技術を活用してつくられたもので、次第に芸術性が高まり、著名な彫刻作家も現れました。時に電動工具の助けも借りながら石や動物の骨を手彫りで加工し、クマやセイウチなど北極圏の動物や、イヌイットの神話に登場する神などをかたどった作品が多く作られています。

 久子さまによると、高円宮さまは、カナダ留学中に小さな彫刻作品を一つ買い求めました。ご結婚後、久子さまと共に95年にイヌイットの集落があるカナダ北部バフィン島のケープドーセットやイカルイト、96年にデンマーク領グリーンランドと再度カナダ北部を訪問。公務の傍ら、イヌイットの作家が集まる販売拠点などに足を運び、作品を収集されました。久子さまは「最初はたくさん集めるつもりはなかったのですが、現地で実際に作品に触れる中で増えていきました」と明かしてくれました。ケープドーセットで多くの作品を集めたそうですが、そこでは、トロントやオタワではショーケースに入っているような作品が、倉庫のような場所に所狭しと並び、作家の出入りも多かったそうです。

 一般公開中の大使館ギャラリー…

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