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 2日開幕した体操の世界選手権で、内村航平(リンガーハット)が男子予選の跳馬の着地で左足首を痛めて途中棄権。個人総合7連覇を逃した。

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 柔道家ならぬ体操家とでも呼びたくなる内村航平の振る舞いや語り口を見聞きしてきたなかで、強い印象を残したひと言がある。

 「地獄ですよね。また勝ってしまった。でも、それぐらい追い詰められた方がいいのかな」

 少し投げやりに、そして、自嘲気味につぶやいたのは4月。世界選手権代表の2次選考会を兼ねた全日本個人総合選手権で、ぼろぼろになりながら10連覇を決めた時だった。

 「彼には勝ち続けたからこそのプレッシャーがある」と話したのは、内村が昨年11月まで所属していたコナミスポーツの森泉貴博ヘッドコーチだ。

 だからこそ、その反動も大きかった。念願の団体金メダルを手にしたリオデジャネイロ五輪後の内村は「まるで抜け殻だった」という。器具に少し触れるだけで練習を打ち切る日々が続いた。

 本格的な始動が昨年12月までずれ込み、仕上がりが遅れた分、今季の苦戦につながった。プロに転じたのも、気持ちを奮い立たせるために必要だった。

 年齢の波が押し寄せつつあったのは確かだろう。世界を見渡しても全6種目をこなす28歳のオールラウンダーは少ない。本人も回復力の衰えを口にしている。けがによる負けとはいえ、選手として岐路に立つことは自覚している。

 「6種目やることを考え直さないといけないのかと正直思った。違う形で体操をやってもいいのか。でもそれは逃げているんじゃないかとも感じる」

 松葉杖を突きながら心中を明かした。

 採点競技において、「王者衰退」という印象の影響は大きい。内村だけでなく、体操日本にとっても東京五輪に向けて厳しい戦いが待っている。(潮智史