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 世界中のセレブが高級ホテルに集い、ワイン片手に談笑する――。長年、五輪や関連の国際会議を取材してきた記者の目には、国際オリンピック委員会(IOC)の委員たちには、そんな貴族のようなイメージがつきまとう。そのIOCが、東京五輪に向けて「VIP用のラウンジの縮小」を提案した。金がかかりすぎ、招致都市の負担が大きい現状の五輪のあり方を見直す、「脱貴族宣言」のようにも聞こえる。

 IOCと東京五輪の大会組織委員会が、2日間の事務折衝を終えて臨んだ10月4日の総括記者会見。「IOCは、今後の夏季五輪で10億ドル(約1120億円)を節約したいと言っている。すでに動き始めている東京五輪も、現状の予算案(約1兆3850億円)から10億ドル減らせるということですか?」

 ジョン・コーツIOC副会長に、私はこんな質問をした。返ってきた答えは、「それが狙いだ。実現可能だと思っている」。五輪を今後も続けていくため、過去の大会の無駄を検証しているコーツ氏は続けた。「例えばオリンピックファミリーのラウンジは、IOCのものと国際競技団体(IF)のものを一つにまとめてもいい。過去の大会では(全体の)40%ぐらいしか使われていないんだ」。オリンピックファミリーとは、IOC委員や各IFの役員などを指す。

 私は2008年北京から16年リオデジャネイロ大会まで、夏冬5回の五輪を現地で取材した。どの競技会場にも一番いい場所に「オリンピックファミリー席」があり、その奥に「オリンピックファミリー・ラウンジ」がある。記者の取材証では立ち入れないので入ったことはないが、関係者は「いわゆるVIP用のラウンジで、ワインやシャンパンなども置いてあります」と話す。ラウンジはこれまでIOC関係者用と、IF関係者用が別々に設けられていたが、「無駄を省くために、東京五輪以降はまとめて一つにしていいんじゃないか」というのがコーツ氏の提案だった。

 2日間の事務折衝で、日本の組織委側は、大会関係車両数、ボランティアの人数、選手村の食事量など、いわば「こまごました」25項目を節約できる分野として提案した。一方、IOCはこれまで自分たちの聖域だった「VIPラウンジ」へ切り込んできた。IOCの提案の方が、私の目には新鮮に映った。

 五輪は今後も続けられるのか。IOCにはそんな危機感がある。9月に東京に続く夏季五輪の開催地を24年はパリ、28年はロサンゼルスと一括で決めたのも、2大会分の開催都市を確保して一息つきたかったから。冬季五輪に至っては、欧州の都市が手を挙げる意向を示しては、住民投票で反対に遭って立候補を断念するという流れが、近年繰り返されている。

 東京五輪の組織委は、IOCと組織委の提案をすり合わせ、年内にも発表する改訂版の予算案で、まずはできる限りの絞り込みを目指す。まだ節約できる分野はあるはずだ。例えば、IOCが東京都などと結んだ開催都市契約の運営要件の中で、IOC委員や幹部のホテルは「四つ星か五つ星」と定められているが、せっかくラウンジを節約するのだから、ホテルにだって切り込んでもいい。

 五輪の存続のために本気で改革をするつもりならば、削れるお金はいくらでもある。(平井隆介