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 衆議院議員選挙で世論はにぎわっているが、その一方で、静かに国の文化財保護制度の見直しが進んでいる。文科大臣の諮問を受け6月1日に急きょ設置された文化審議会文化財分科会企画調査会で、「これからの文化財の保存と活用の在り方」が検討され、見直し案の中間まとめについてのパブリックコメントが先月末で締め切られた。

 政府の「文化財をもっと観光振興などに活用すべし」という方針を受けてのものであろうが、前に小欄で書いた「文化財を地域活性化のソフトインフラに」という筆者の思いにかなうかといえば、そう手放しに支持できない。地方自治体の文化財保護行政の、専門家不足と予算不足という現状を踏まえぬ、独善的と言わざるを得ない提案が目に付く。

 方向性は一見まともに見える。地域の文化財が過疎化・少子高齢化で維持・管理できなくなってきている危機的状況にかんがみ、文化財を総合的に保存・活用する基本計画を各市町村が立てて、地域の文化や経済の振興の核に位置づけることを推奨している。

 具体的には、各教育委員会が設置する既存の地方文化財保護審議会とは別に、首長部局も含めた関係部局や都道府県、文化財所有者、住民、NPO等の民間団体、商工会、観光関係団体、学識経験者などから構成する協議会が、基本計画を立案するという。

 国・都道府県・市町村指定文化財ではないものも含め、地域に残る文化財を総合的に把握して、それらの価値づけ、普及啓発、修理管理、遊休資産の事業化等を進める。また計画に合致する事業を民間から募ることも勧める。

 どこかの市町の首長が、その基本計画を早く作れと、若干の予算を盛って関係部局に命じたとしよう。準備事務の中心は、多くの場合、文化財のことだからと教育委員会の文化財担当にいく。

 しかし全国の市町には、埋蔵文化財、つまり考古学を学んだ担当はいても、美術工芸史や建築史を学んだり、その分野の専門家との人脈をもったりする担当はほとんどおらず、文化財の価値と保全を中心に据えた議論を進める協議会ができるか、きわめて心もとない。

 見直し案は、教委側の人材不足…

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