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 まっすぐ伸びた背中。「さあ、来い」。そう言わんばかりの顔で相手と正対する。柔道男子100キロ級の新鋭、飯田健太郎。東京五輪で頂点を目指す19歳は、その立ち姿が美しい。28日にあと1000日となった2020年東京五輪で、金メダルが期待される若手だ。

 身長は188センチなのに、両手を広げたリーチは2メートルを超える。この長い腕が強力な武器になる。「背中を丸めると相手と距離が詰まってしまう。腕の長さを生かすためにも、背筋を伸ばして立つ方が戦いやすい」。相手をつかみ、しっかり組んで技をかける正統派の柔道を志す。

 東京・国士舘高3年だった今年2月、国際大会「グランドスラム・パリ」を制覇した。決勝でリオデジャネイロ五輪銅メダルのマレ(フランス)など、海外の猛者を次々と退けた。その勝ちっぷりに国際柔道連盟の公式サイトは「new Inoue」と飯田を紹介。男子100キロ級で2000年シドニー五輪を制した井上康生(現・日本代表男子監督)を引き合いに出し、その力を称賛した。

 神奈川県出身。高校の柔道部で顧問をしていた父・敦往(あつゆき)さんに誘われ、6歳で柔道を始めた。デビュー戦で女の子に負けた。根っからの負けず嫌い。「次は絶対に勝つ」という思いが柔道を続ける源になった。

 小学生の頃、柔道以上に熱中したのが野球だった。大の巨人ファンで、「代打職人」の大道典良や盗塁のスペシャリストの鈴木尚広(たかひろ)ら、地味でも技術が光る選手にひかれた。「誰もまねできないようなプレーをする選手が格好良くて」

 日本代表では井上から指導を受け、国士舘大では鈴木桂治が監督を務める。男子100キロ級で長くライバル関係にあった2人だ。「すごく幸せな環境です」。試合前には2人の現役時代の映像を見て、気合を入れる。「こんな技で勝てたら、どれだけ爽快なのかって想像するんです。ワクワクするし、やってやろうって気持ちになる」

 同じ階級にはリオ五輪銅の羽賀龍之介(旭化成)、この夏の世界選手権で優勝したウルフ・アロン(東海大4年)がいる。「自分は追いかける立場で重圧もない。最後は自分が代表を勝ち取り、金メダルを取ります」。体も柔道も未完成。伸びしろは計り知れない。(波戸健一)