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 10月、調査報道に携わる記者の車が爆弾で吹き飛ばされ、殺害される事件が起きた地中海の島国マルタ。彼女は国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)によって昨年公表された「パナマ文書」に基づいて、政府の腐敗を追及していた。背後には組織暴力の影もちらつく。「言論の自由を守れ」。マルタの人々は連帯して声を上げている。

 「悪党だらけ。状況は絶望的だ」。マルタの調査報道ジャーナリスト、ダフネ・カルアナガリチアさん(53)が自らの人気ブログに書き込んだのは、10月16日午後だった。直後にレンタカーで自宅を出たところ、車に仕掛けられた爆弾が爆発した。即死だった。

 パナマ文書をもとに政府の疑惑を追及した彼女は、欧州では知られた存在だった。政府の重要閣僚やムスカット首相の妻が中米パナマに会社を置き、マルタにエネルギー輸出を図るアゼルバイジャンの大統領の家族の会社から大金を受け取っていたと指摘。追い詰められたムスカット首相は今年6月、批判をかわすために前倒し総選挙に踏み切った。

 政権は前倒し選挙で過半数を確保し、「再出発」が軌道に乗り始めた矢先だった。ムスカット氏は事件の打撃を抑えようと、米国連邦捜査局(FBI)やオランダの鑑識チームを招き、徹底捜査を誓った。

 与党・労働党のアレアンデル・バルザン報道官は「政府は言論の自由の保障に力を尽くしてきた」と強調する。だが選挙の勝利で疑惑のみそぎを済ませたとする政府への批判が、事件で一気に噴き出した。

 主要紙「マルタ・インディペンデント」のラチェル・アタルド編集長は「疑惑に対して首相がすべきだったのは、関係者に責任をとらせること。選挙を前倒しすることではなかった」と言う。

 マルタは人口わずか42万。欧州連合(EU)内でも治安の良さを誇り、記者が殺されたのも初めてだ。

 首都バレッタ周辺では、記者殺害や政府の対応に抗議する集会が2度開かれ、いずれも1万人近くが集まった。10月29日の集会では、若者からお年寄りまでが彼女がブログに残した最後の言葉を染めたTシャツを着て、「我々は黙らない」と訴えた。

■「外国マネーが腐敗…

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