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 心臓の移植手術を子どもに受けさせたいと海外渡航に踏み切る親たちがいる。国内での移植がかなわず、救えない命があるからだ。脳死からの移植に道が開かれ20年。子どもからの臓器提供が可能になって7年がたつが、提供はわずかだ。移植への理解が進まないことや対応できる施設が少ないこと、手続きが複雑といったいくつもの問題がある。

 拡張型心筋症と診断され、昨年夏に米シアトルで移植を受けた青山環(たまき)ちゃん(4)。父の竜馬さん(37)は2015年末、病院からのメールで、約2億円の前払い金が必要だと知らされた。主治医や支援団体と相談し、医療費に渡航費も含めて3億2千万円を募金の目標額とした。

 額の高さに驚いたが、ほかに方法はなかった。「受け入れてもらえる可能性があるなら、お願いするしかないと思った」。大阪や仙台などを拠点に16年3月に募金活動を始めた。

 双子の妹として札幌市で生まれた。生後約7カ月で姉の菫(すみれ)ちゃんが心不全で亡くなった。直後に環ちゃんも病気とわかり大阪大病院に移り、治療を続けた。だが補助人工心臓をつけても改善しない。母の夏子さん(36)は、1時間かけて食事をとらせても体重が増えずつらそうな姿を見て「限界だと思った」。夫婦で渡航移植を決意した。

 募金には友人らが協力してくれ、8月に目標額が集まった。竜馬さんは会社を休職し、9月に3人で渡航した。だが出発直前、米国の病院側の手続きに不備があることがわかり、一時は渡航自体が危ぶまれた。医師らが同乗した飛行機の中では、補助人工心臓のポンプが破れた。感染症の危険もあったが、ポンプ交換の手術を受けた。

 到着後すぐにドナーが見つかり、手術は成功した。「移植を望んで来たのに、ドナーのことを考えると悲しい気持ちにもなった」と竜馬さん。英語でアパートを探したり、医師らから説明を受けたり。言葉の壁も負担だった。

 今年3月に帰国。4月に退院した環ちゃんの体重は約12キロまで増えた。拒絶反応を抑える免疫抑制剤を飲み、今は月に数度、大阪大病院に通う。竜馬さんは「多くの人のおかげで移植までたどり着けた」と感謝する。その一方、「国内で受けられるなら受けたかった。ほかの親御さんに同じ思いはしてほしくない」と語る。

■待機から、提供す…

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