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 パラダイス文書の内訳は、①大手法律事務所アップルビーの内部文書683万件②シンガポールの法人設立サービス会社「アジアシティ」の内部文書56万6千件③バハマ、マルタなど19の国・地域の登記文書604万件だ。

 最大の流出元となったアップルビーは、バミューダ諸島やケイマン諸島といったタックスヘイブン(租税回避地)を中心に世界10カ所に拠点を構える。米国をはじめ世界の政治家や富豪、多国籍企業の依頼を受けて、ペーパーカンパニーなどを設立する。年1億ドル(約114億円)以上の収益がある。

 アップルビーはICIJの質問状に回答せず、代わりに10月下旬からホームページ上に相次いで声明を掲載した。要旨は次の通り。

 《我々の会社が情報を流出させたのではなく、違法なコンピューターハッキングを受けた。違法に入手された文書は、世界のジャーナリストによって使用されるだろうが、根拠のない主張に対して、会社と、正当で合法な事業を守る》

 《違法行為を容認していない。不正もない。

 無実の当事者が、データ保護の違反にさらされる可能性があることに失望している。ICIJの主張は根拠がなく、合法で合理的なタックスヘイブンの構造への理解が欠如している》

 またアップルビーから2016年に分社化したエステラ社は、ICIJの取材に対してアップルビーに質問するよう求めた。

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 パラダイス文書がどのようにリーク先の南ドイツ新聞にもたらされたかは明らかにされていない。ただ「どんな経緯で得られた情報であっても、公益にかなう限り報道は適法」という原則が、西側の主要国では認められてきた。各国の裁判所も、民主主義と報道の自由を重視する立場からこれを認めている。

 ベトナム戦争に関する米国防総省の極秘文書がスクープされた1971年の「ペンタゴン文書」では、米司法省が記事差し止めを申し立てたが、裁判所は政府側の主張を認めなかった。米中央情報局(CIA)元職員のスノーデン氏が持ち出した米国家安全保障局(NSA)の機密情報を元にした2013年の英ガーディアン紙の報道についても、NSAの元法律顧問は「ひとたび記者の手に渡ったら、記者の権利は守られる」と言明したという。

 秘密文書を内部告発目的で持ち出し、記者にもたらす行為自体についても、違法性は阻却されるとの見方が近年は強まっている。

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〈国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)〉 米ワシントンに本拠を置く非営利の報道機関で、1997年から活動している。オーストラリアの新聞社幹部だったジェラード・ライル氏が事務局のスタッフ20人を率いる。約70カ国のジャーナリストがメンバーで、国境を越える社会問題を共同で取材する。今年5月にはパナマ文書の報道でピュリツァー賞を受賞。朝日新聞社は12年から、国内の報道機関として最初に提携している。

 米商務長官をめぐる取材はサーシャ・シャフキン、マーサ・ハミルトンの両記者が担当。カナダ首相の腹心をめぐる取材はライアン・シトゥム記者、カナダCBC放送のハービー・キャショア記者が担当した。