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 大阪市西成区の看護師、伊藤悠子さん(56)は、心に深い傷を負いながらわが子への虐待や自傷行為がやまない母親たちに向きあってきた。グループの語り合いを機縁に虐待などの当事者らに心の傷からの回復を促す「MY TREEペアレンツ・プログラム」に取り組んで、15年となる(問い合わせは同プログラムセンター080・3785・2001)。

 匿名、保秘などの約束のもと、参加者約10人が司会役3人とともに半生の経験を互いに語る。虐待する側の多くも深刻な暴力の被害にさらされてきた。「生き残れた力を自分を変える力へと転化する営み」――。関係者への3年間に及ぶ聞き取りを今月、著書「母親の孤独から回復する」(講談社選書メチエ)にまとめた大阪大学の村上靖彦教授(47)=医療現場の現象学=は、劇的な効果を記す。

 国内12のグループで修了者は967人に達したが、熟練を要する司会役の育成が課題だ。「暴力の衝動の根源には、本人すら気づいていないトラウマがある」と伊藤さんは語る。近年、ますます人が大切にされなくなり、弱い立場の人が更に孤独を深める現状を痛感するという。

(編集委員)

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