[PR]

 子育て世代の親らでつくる市民グループが27日、東京・永田町の自民党本部を訪ね、「政府・与党が進める幼児教育無償化より待機児童解消を」と求める3万人を超す署名を届けた。グループは、SNSを武器に子どもを保育園に入れられない当事者らの声を束ね、子育て政策を動かし始めている。

 「公約で掲げた無償化にこだわらず、当事者の生の声や要望を、もっと政治に反映させてほしい」。27日昼、自民党本部。すやすや眠る子を抱っこひもでかかえた母や、有休を取ったスーツ姿の父ら10人の保護者が「人生100年時代戦略本部」の片山さつき副本部長に署名を手渡した。

 10人は、東京都武蔵野市などの「保活」経験者で結成された「希望するみんなが保育園に入れる社会をめざす会」のメンバーだ。会社勤めなどのかたわら、昨年、保育園の新設を求める陳情を4千人超の署名とともに武蔵野市議会に提出し、全会一致で採択された。だが、周辺住民の反対もあって一つも新設されなかった。

 「じゃあどこへ行けばいい?」。話し合った末、国会へ。与野党の議員に呼びかけ、衆議院議員会館で2度、待機児童ゼロを訴える集会を開いた。

 並行してSNSでの発信を始めた。工夫したのが見せ方だ。キーワードで興味のある投稿を一覧できるハッシュタグ(#)機能を使って「#保育園に入りたい」と題し、落選通知を写真に撮ってアップしてもらうよう親たちに呼びかけ、待機児童問題で困っている人たちを「見える化」させてきた。

 そうした中、安倍晋三首相が衆院解散を表明した9月の会見で「3~5歳の全ての子どもの幼児教育と保育の費用を無償化する」と表明した。

 ところが、選挙後の今月初旬、認可外の保育施設は無償化の対象外との政府方針が報じられた。

 「選挙の前後で話が違う」と、ツイッターで「#子育て政策おかしくないですか」と発信。子育て世代から批判するツイートが連なった。その後、政府は対象に入れる方針に転じた。

 現在は、限られた財源の使い道を問う声を上げている。衆院選で自民党の公約に無償化策が挙げられた直後、「財源に限りがあるなら優先してほしい政策」をツイッター上で有権者にアンケート。1週間で約6千の回答が集まり、「幼児教育無償化」をあげたのは16%、「待機児童解消」は77%だったとの結果を公表した。

 27日に手渡した署名は、希望する人全員が入れるよう保育園をつくることや保育士の待遇改善を求めたものだ。ネット上で呼びかけ、3万人近く集まったころ、政府は消費増税分の一部を使って保育士の賃金を引き上げる方針を固めた。

 署名を受け取った片山氏は、「すごいパワーを感じる。政治としては、当事者の思いをまとめてもらえることはありがたい」と応じた。メンバーの男性会社員(41)は「たった10人の問題提起が一気に何万人に広がり、政策を論じ、意見を表すところまできた。だがここで満足せず、今後、実際の政策がどうなるかを注意深く見守りたい」と話した。(田渕紫織、中井なつみ)