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 神奈川県座間市で若者9人が遺体で見つかった事件は、インターネットのツイッターでの自殺に関するつぶやきが容疑者と多くの被害者の接点になったとみられる。多くの人が抱える悩みにどう対応できるか。山梨いのちの電話は2001年から、相談を電話で行ってきた。

 「打ち明けることのできない心の重さをひとりで抱え、生きることもつらくなった時、そんな時の支えになれたら」。そうした願いから、いのちの電話は生まれた。

 平日の夕方から夜にかけて、電話がかかってくる。「統合失調症ではないでしょうか」「孤独で寂しい」……。ひとりひとりの悩みに、相談員が丁寧に耳を傾ける。20分から1時間ほど、自分の気持ちをはき出すと、落ち着いて自分を取り戻し、受話器を切る人も多いという。

 山梨いのちの電話の高戸宣人(たかとのぶひと)副理事長(65)は語る。「周りに相談する人がいない人は、聞いてもらいたいんです。私たちはとにかく神経を研ぎ澄まし、一生懸命聞くという姿勢を貫いています」。中には「鉄橋の上に立っている。これから死ぬ」という電話もある。高戸さんは「相手のことをわかろうとするこちらの姿勢が大事。私のことを一生懸命聞いてくれ、わかろうとしてくれる人がいる。そこを感じていただいた時に、気持ちが切り替わってくるんです」と話す。

 昨年は県内から4319件の相談があった。内訳はうつなど精神に関する悩みが27%、人生についてが16%、家族が12%、対人関係が10%、職業6%。自殺傾向のうかがえるものは8%あったという。

 年代別で見ると、40代(27%)、50代(22%)、30代(19%)が多い。一方、20代は9%、10代は4%と、若者からの相談は少ない。日本いのちの電話連盟は「電話で言葉をかわすことが、若者の負担になっているのではないか」と、インターネットやメールでの相談に取り組み始めている。ラインやツイッターのようなSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を活用して相談に乗る団体も出ているという。

 座間市の事件について、高戸さんは「文字でのやりとりの落とし穴だろう」とみている。「SNSでやりとりして、相手の人となりがわからないまま、いい人だろうと思ってしまったのではないか。電話だと、沈黙とかためらいとか、言葉をにごすことがある。そういう中から感じとる情報がずいぶんある」と話す。

 相談員になるには、公開講座や2泊3日の研修に参加するなど、四つの研修を受ける必要がある。高戸さんによると、相談員は現在83人だが、高齢化などで実際に活動しているのは45人。50~60代が中心だ。高戸さんは「困っている人を何とかしたいという方に相談員になっていただきたい」と話している。(田中基之)

作家や臨床心理士ら 無料の公開講座開催

 山梨いのちの電話は月2回、午後2時から無料の公開講座を開いている。来年2月4日にはノンフィクション作家の柳田邦男さんの自殺予防講演会「いま、生きているいのち~そのかけがえのなさ~」が県立文学館講堂である。

 このほか12月16日には県立青少年センターリバース和戸館で、臨床心理士の清水隆善さんが「うつに陥る人のこころ」のテーマで話す。1月6日には甲府市総合市民会館で、臨床心理士の稲永澄子さんが「だいじな人や対象を失うとき」のテーマで講演する。

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 〈山梨いのちの電話〉 甲府市に事務局のあるNPO法人で、2001年に設立。運営を支える個人会員(1口3千~1万円)や法人会員(1口1万円)を募集し、寄付金も受け付けている。またボランティアの相談員を募集している。23歳以上65歳までで、学歴や経験は問わない。四つの研修を受ける必要がある。問い合わせは事務局(055・225・1511、平日午後1~5時)へ。

◆山梨いのちの電話相談窓口

055・221・4343

(火曜から土曜、午後4~10時)