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 旧優生保護法のもと、知的障害を理由に同意なく不妊手術を強制され、憲法の保障する幸福追求権を侵害されたとして、宮城県の60代女性が来年1月にも、国に謝罪と賠償を求める訴訟を仙台地裁に起こす。原告側によると、同法による不妊手術の違憲性を問う訴訟は全国で初めて。

 原告側によると、女性は幼い頃の麻酔治療の後遺症で重い知的障害が残り、不妊手術を受けさせられた。情報公開請求で7月に宮城県が開示した手術台帳には、「遺伝性精神薄弱」を理由に、15歳で県内の病院で卵管を縛る処置を施された記録があった。女性が事前に国や県から説明を受けた記録はないという。

 3日、東京都内であった障害者のシンポジウムで女性の60代の義姉が経緯を説明した。親族に障害のある人はおらず、「手術するために『遺伝性』という病名をつけたのではないか。納得できない」と訴えた。

 女性の腹部には大きな手術痕が今も残る。手術後、頻繁に腹痛を訴え、30歳前には手術で癒着した卵巣を摘出した。縁談もあったが、子どもを産めないことを理由に流れた。義姉は「残酷で人権無視以外の何ものでもない。被害者が高齢化するなか、誰かが声を上げなければ」と話した。

 同法は「不良な子孫の出生防止」を目的とし、医師が必要と判断すれば、都道府県の審査会での決定を経て、「優生手術」として不妊手術を実施できた。旧厚生省は「本人の意見に反しても行うことができる」として、同意がなくても手術は強制可能と通知していた。

 国連の女子差別撤廃委員会は2016年、優生手術の実態調査や手術を受けた人への補償を日本政府に勧告。日本弁護士連合会も今年2月、「優生手術が対象者の自己決定権を侵害し、差別だったことを認め、謝罪・補償するべきだ」との意見書を国に提出した。

 国は補償に難色を示しているといい、女性の代理人の新里宏二弁護士は「障害者が出産を自分で決める権利を奪った旧優生保護法の是非と、人権侵害への補償を放置している国の責任を問いたい」と話す。(桑原紀彦、山本逸生)

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 〈優生保護法〉 1948年に施行され、遺伝性疾患やハンセン病、精神障害などを理由に不妊手術や中絶を認めた。日弁連によると、全国で手術を受けた約8万4千人のうち、約1万6500人は同意なく不妊手術をされた。96年に「母体保護法」に改正され、優生手術の規定は廃止された。