[PR]

 今日は水曜日。週の真ん中の日の出来事を手紙に書き、ある郵便局に送ってみませんか。すると、別の誰かが記した水曜日の物語があなたに届くんです。

 私設郵便局「鮫ケ浦(さめがうら)水曜日郵便局」は6日、宮城県東松島市の宮戸島に開局した。約500人が暮らす島の入り江に白いポストが設けられた。手紙を送った人には自分の知らない誰かから手紙が届き、自身の手紙も別の誰かに送られる。手紙は個人情報をペンネームと年齢、都道府県名だけにして無作為に交換する。

 「郵便局長」を務めるのは、東京在住の映画監督、遠山昇司さん(33)。2013年から3年間、出身地の熊本県にある廃校の小学校を舞台に同じ取り組みを続けた。見知らぬ人の日常を知ることで世界が広がるのではないか。週の通過点の日に焦点をあてることで日常を大切にしてほしいとの思いから、水曜日の手紙交換を思いついた。廃校に設けたポストには全国から約1万通の手紙が届いた。

 長野県の65歳の女性は「久しぶりに口紅を買った。明るいオレンジ色。恥ずかしいような、うれしいような」と書いた。「これまでこんなきもちにはならなかったけど、すきなおんなのこができました」と記した小学生もいた。

 東日本大震災の被災地からも多く届いた。自身の海産物直売所を津波に流された宮城県の女性(44)はこう記した。「私は職場で、主人は海の上でお弁当を広げています。偶然が重なって助かった私達。やっと今、落ち着いた気持ちで暮らしています」

 近所に誰もおらず、他人とのやりとりはこの手紙だけ、と繰り返し送って来た一人暮らしのお年寄りの女性もいた。「みんな人とのつながりを求めているんだと感じた」と遠山さんは話す。

 再開を望む声が多く寄せられ、遠山さんは1年間に限って開局を決めた。どこで再開するか探していたところ、廃校によく手紙を出していた宮城県の女性(37)から紹介されたのが、この入り江だった。

 島にある長さ60メートルの素掘りのトンネルを抜けないと、入り江にはたどりつけない。「タイムスリップしたような不思議な感覚にとらわれた。トンネルの先にある光が、希望の光に見えた」と遠山さん。紹介した女性も「たわいのない内容が多かったが、時を止めて日常を振り返る水曜日が、自分にとって貴重な曜日になった」と振り返る。

 手紙の宛先は、〒981・0394 宮城県東松島市宮戸字観音山5番地その先 鮫ケ浦水曜日郵便局。詳細は事務局のホームページ(https://samegaura-wed-post.jp/別ウインドウで開きます)か、事務局(03・5579・2724)へ。(岡本進)