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 JリーグアウォーズでのMVPと得点王の同時受賞を知った瞬間、川崎の小林悠は、こみ上げる涙をこらえるように、唇を強くかみしめた。

 さまざまな苦難を乗り越えてつかんだ栄冠だ。

 序盤は、新たに任された主将の重圧に悩んだ。監督の要求する前線からの守備を実践しようと走りすぎ、シュート時に十分な力を出せなかった。チームをまとめようと人間関係に心をくだいた。

 「自分が自分が、という主将がいてもいい」。シーズン半ばに取材を受けたカメラマンにかけられたアドバイスに、気持ちが楽になった。後半戦17試合で15得点と復調し、計23得点と自己最多ゴール(15得点)を大きく更新した。

 2010年の川崎入団以来、ケガとの闘いの連続だった。15年には右足の肉離れやひざの手術などで18試合しか出られなかった。

 今季は、J1デビューから8年目で初の全試合出場。「1番の目標にしていた。全試合に出られれば、得点も多く決められる自信があった」

 ケガを防ぐために効果があると聞けば何でも採り入れた。ヨガを習ったり、マウスピースをつくったり。妻も、子育てに忙しいなか、食事のメニューに工夫をこらして支えてくれた。

 MVP受賞のあいさつで、かみしめるように言った。「プロになってからケガの多かった僕と、悔しい思いをするたびに一緒に泣いてくれて、乗り越えてくれた奥さんに感謝の気持ちをつたえたい。ありがとう」。妻と2人の息子を壇上に迎えると、晴れ晴れと笑った。(清水寿之)