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 皆さん、「3秒ルール」って聞いたことありますか?

 あめやチョコレート、お箸でつかみにくい食べ物が手元から滑り落ちて床などに転がったとき、3秒以内ならばい菌がつかないから食べられる、とかいう怪しいやつです。

 誰が考えてもウソに決まっていますよね。ばい菌には3秒数えてから食べ物に乗り移るなんていう器用なことはできません。

 大体、「秒」なんていう単位で時間を計っているのは人間だけです。ほとんど床のチリなどと一緒にくっついてしまうのでしょう。食べ物が床に落ちたら、それなりのものがくっつくと考えるのが正しい。

 しかし、「どうしても食べたかった」「一見きれい」「これを逃すと食べるチャンスはない」「もったいない」などなど、落ちたものを口に入れたいという誘惑にかられる場面は少なくありません。こんな時、言い訳に使われるのが3秒ルールです。

 日本人は清潔にこだわる国民ですし、こんな言い訳でもないと食べられないのかもしれないと思っていたのですが、外国でも似たようなルールがありました。日本より長い5秒ルールで、他にも10秒ルールなどいろいろあるらしいです。国は違っても、人は似たようなことを考えるものですね。

 さて、果たして3秒ルール、あるいは5秒ルールって本当にダメなのでしょうか?

 そこで、私たちが仕事で使用する英文医学文献検索サイトPubMedで、3秒ルール(three―second rule)あるいは5秒ルール(five―second rule)をキーワードに検索してみました。

 すると、まじめに検討した米国の論文(2016年発表)が見つかりました。バターを塗ったトースト、グミ、スイカなどをいろいろな住宅材(タイル、ステンレス、木材、カーペット)の上に落とし、1秒、5秒、30秒、5分でどれだけ細菌に汚染されたか実験したものです。

 バカバカしいとお思いかと思いますが、米国の微生物学会が出している、由緒正しい学術誌に掲載された真面目な論文です。

 結果は皆さんの予想通り、時間経過とともに細菌汚染の程度はひどくなるのですが、1秒でもやはり細菌汚染は避けられないのです。この論文以外にも検討したものがありましたが、やはり5秒ルールを正当化できる根拠は見当たりません。

 床に落ちたものを食べてばい菌によって食中毒になる確率がどれくらいかと問われれば、答えに窮してしまいますが、冬に流行するノロウイルスは大変感染力が強く、ごく少量のウイルスでも感染するとされています。

 もし、お子さんが外から帰ってきて、手も洗わずにパンやお菓子を食べているなら、それは床に落ちたものを食べるのと五十歩百歩。子供のうちから手洗いの習慣付けをしたいものです。

<アピタル:弘前大学企画・今こそ知りたい! 感染症の予防と治療>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/hirosaki/(弘前大学大学院医学研究科臨床検査医学講座教授 萱場広之)