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 ◆LGBTへの理解 道半ば

 2020年の五輪・パラリンピックでは、世界中から様々な価値観を持つ選手や観客を受け入れる東京。LGBT(性的少数者)への理解など、多様性社会を目指す取り組みは進んでいるのでしょうか。

 ともに会社員で江戸川区に住む七崎良輔さん(29)と古川亮介さん(33)は、カミングアウトしている「ゲイ夫夫(ふう・ふ)」。「特殊な人間ではなく、普通に暮らしていることを知ってほしい」と、顔も名前も出してブログで日常をつづる。

 嫌がらせのコメントが寄せられることもあるが、応援してくれる人も多い。2人が強く願うのは同性同士の結婚が認められること。2015年秋、江戸川区役所に婚姻届を提出するが一時預かりに。1週間後、「男性同士が当事者」を理由に不受理になった。

 ◇認められぬ不安

 子どもの頃から結婚願望が強かった七崎さん。不受理は予想していたものの、理由に改めてショックを受けた。「なぜゲイは結婚できないのだろう。社会から100%は受け入れられていないのか」。でも、あきらめないで幸せをつかみ取ろうと決心した。

 民法の婚姻の規定を参考に、2人でパートナーシップ契約の文案を検討し、「結婚記念日を祝うこと」「貞操義務」なども盛り込んで公正証書を作成。結婚式を築地本願寺で挙げた。

 だが、公的、法的に夫夫の関係が認められていないことで不安は残る。「どちらかが事故で緊急手術となったとき、病院は配偶者としての同意のサインを認めてくれるだろうか」

 ◆婚姻届は不受理、人権救済申し立て

 渋谷区や世田谷区にはLGBTカップルの関係を公式に認める「パートナーシップ制度」が導入されている。江戸川区も続いてほしいと七崎さんは区議会に月に数回足を運び、各会派の議員に「ロビー活動」を繰り返した。区長との面会も実現した。

 昨年3月、パートナーシップ制度を求める陳情は本会議で「趣旨採択」された。趣旨には賛成するが、当分の間は実現不可能――。そんな判断だ。古川さんは「それでも数年前と違い、区役所の理解は広まってきた」と評価する。

 ◇五輪に向け動き

 七崎さんと古川さんは全国の同性愛者ら約450人とともに15年7月、「同性婚ができないのは憲法が定める法の下の平等に反する」と、日本弁護士連合会に人権救済を申し立てた。

 七崎さんは今月13日、都議会を初めて訪れた。LGBTの問題で都政や都議会を意識したことはなかったが、「東京五輪・パラリンピックまでに前向きな変化があったら」と考えたからだ。比較的熱心だと聞いた生活者ネットワークの控室を訪ねると、居合わせた西崎光子都議(世田谷区)が懇談に応じた。

 今期限りで引退する西崎都議は「私はLGBTは隠れた大きな票だと思っている。若者が興味を持つ政策を打ち出していかないと」と言う。「ただ、女性や少数者が暮らしやすい多様性を訴えても、都議会は数の論理。保守的な会派がついてこない」とも。

 七崎さんは「米国では同性婚が認められて、子どもたちの自殺率が下がったという話を聞いた。少数者として悩んでいる若者に希望を持たせてほしい。都政に注目します」と話した。

 都は15年、人権施策推進指針を15年ぶりに改定。「性同一性障害者」「性的指向」の2項目を加えた。今年度は性的少数者について学ぶeラーニング研修を全職員を対象に実施する。東京五輪・パラリンピックでは、心と体の性が一致しないトランスジェンダーにも優しい「男女共用トイレ」を、都が整備する会場に設置するという。

 性的少数者支援に取り組むNPO法人「虹色ダイバーシティ」の五十嵐ゆり理事は「都はまだ何の施策をすべきかイメージできないのかも。当事者や支援者が議員らに訴えていくことも大切だと思う」。

 (有吉由香)

 ■都議選に複数の現職候補を立てる主な各党の主張

・自民「若者、高齢者、女性、非正規労働者、障害者など、全ての人が活躍できる社会の実現」

・民進「偏見や差別を受けることが多いLGBTの人権施策はもとより、ヘイトスピーチは許さないとの立場から、多様性が尊重される東京の実現に取り組む」

・公明「『誰もが生き生き』希望都市・東京へ――生活者の現場から」

・共産「LGBT・性的マイノリティーの差別解消や支援の推進など、一人ひとりの人格と個性が尊重される東京をつくる」

・都民ファ「ダイバーシティーを実現し、やさしい街へ」

・ネット「多様性を認め合い、差別や偏見を解消、どんな時でも、一人ひとりの人権を保障する」