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 ◆「あの人に逢えるまで」新宿で18日まで上映

 ◇「南北分断の家族 癒やしたい」

 日本でもヒットした映画「シュリ」をはじめ、朝鮮戦争による南北分断をテーマにした作品で知られる韓国の映画監督カン・ジェギュさん(54)。新宿区のシネマート新宿で18日まで上映中の短編映画「あの人に逢(あ)えるまで」(28分)が好評だ。来日したカンさんが、映画の狙いや北朝鮮について語った。

 ■「反戦に共感を」

 20年ほど前、映画の脚本を作るため北京に滞在していた時、北朝鮮の留学生と触れあう機会があった。それまで「北朝鮮は敵」と思っていたが、分断された歴史や離散家族の痛みと向き合うようになり、「兄弟」と思うようになった。

 韓国には朝鮮戦争で生き別れた家族がかつて1千万人いたと言われている。今は2万人ほど。その人たちの悲しさやつらさを癒やせるような作品を作りたい。韓国映画では北朝鮮を素材にすることはタブー視されていたが、「シュリ」のヒットで、さまざまな作品を作れるようになった。

 「シュリ」では分断された国家を描いたが、「あの人に逢えるまで」では歴史に翻弄(ほんろう)される個人の苦しみ、生き別れた家族の帰りを待ちわびる女性の姿に焦点をあてた。

 最近、北朝鮮がミサイル発射などの挑発行為を繰り返している。私は、「北朝鮮に手出しをすれば、ミサイルや核兵器で反撃するぞ、だから軽くみるな」という意思表示に過ぎず、実際に韓国や日本、アメリカなどを攻撃する意思はない、とみている。もし、朝鮮半島で戦争が起きたら、北朝鮮も韓国も勝者になれず、朝鮮民族は同時に死滅してしまう。どんなに愚かな指導者でも、そんな選択はしない。だから、韓国の大多数の国民は、北朝鮮の挑発行為を、それほどシリアスに受け止めていない。

 各国の政治指導者たちが軍事力を強化するには、「攻撃されそうだ」という前提が必要になる。危機感が誇張されていないか、政治指導者の思惑はどこにあるのか、本質を見抜かねばならない。日本では朝鮮半島で戦争が起こるかのような反応が多く、もう少し冷静になった方がいいように思う。

 日本や韓国、北朝鮮はそれぞれ、戦争によるつらい時間を経験し、多くの犠牲者を出した。映画を通じ、個人の生きざまを大きく踏みにじる戦争は決して起こさない、というメッセージに、多くの方が共感してくれればうれしい。

 (聞き手・岡本玄)

 カン・ジェギュ 1962年、韓国・馬山生まれ。脚本家として名を挙げた後、96年に「銀杏(イチョウ)の木のベッド」(脚本、監督)を発表。99年に韓国と北朝鮮の特殊部隊要員同士の悲恋を描いた「シュリ」が公開され、韓国映画ブームの先駆けとなった。2004年公開の「ブラザーフッド」では朝鮮戦争に巻き込まれた兄弟や家族を描いた。