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 1980年代末から韓国人元慰安婦らを追ったドキュメンタリー映画「沈黙―立ち上がる慰安婦」が12月2日、渋谷区で公開される。映画のなかで日本政府に謝罪や補償を求めて運動し、戦時中の被害について証言する元慰安婦の多くはすでに亡くなっている。

 監督は神奈川県在住の在日朝鮮人・朴寿南(パクスナム)さん(82)。戦時中に沖縄に連れて来られた元慰安婦のペ奉奇(ペポンギ)さんを89年から撮影。94~96年に韓国人元慰安婦らが「被害者の会」を結成し、日本政府に謝罪や補償を求めるため来日した際は、長女麻衣(マイ)さん(49)とともに元慰安婦らの日本滞在を支援し、被害を訴えて国会前や銀座などでデモをする姿を撮影した。

 2015年暮れに慰安婦問題で日韓両政府が合意したのに対し、朴さんは「被害者の声も聞かずに合意した」と怒り、撮りためてきた映像の映画化を急いだ。ビデオテープやフィルムなどさまざまな素材に記録された映像を、日韓の映画関係者がデジタル化し、麻衣さんが手伝って1年半がかりで編集した。元慰安婦が何度も沈黙を強いられながら、そのたびに立ち上がり声をあげてきた経緯を、映画のタイトルに込めた。

 他界した元慰安婦の生前の姿を映した20年以上前の映像も多く含まれることから、韓国の映画祭で若い韓国人らから「ハルモニ(おばあさん)たちの貴重な姿を残してくれてありがとう」と感謝された。朴さんは「ハルモニたちが自ら立ち上がり、生き生きと闘う姿を見てほしい」と話している。

 朴監督にとって今作は、沖縄戦での朝鮮人犠牲者や慰安婦が題材の「アリランのうた―オキナワからの証言」(91年)や「ぬちがふぅ(命果報)―玉砕場からの証言」(2012年)に続く4作目。12月2日から渋谷区の「アップリンク渋谷」などで公開予定。

 (編集委員・北野隆一)