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 (No.1039)

 1月の金曜日の夜、東京・渋谷駅近くの貸し会議室に、LINE(ライン)で連絡を取り合った高校生6人が三々五々、集まってきた。机に菓子パンやペットボトルが並ぶ。「明日何時?」「終わったらご飯行こう」「先に言ってよ。明日は美容院だよー」

 6人は、安保法制反対のデモや勉強会を企画する高校生グループ「T―ns SOWL(ティーンズ ソウル)」のメンバー。翌日の勉強会の準備のために集まった。

 30分遅れて、都立高校2年のあいねさん(16)がやってきた。マネジャーを務めるサッカー部の練習後に駆けつけた。

 議論がにぎやかになる。「2月のデモさ、高校生100人くらい集めたいよね」「誰でも分かるコールがいい」「友達連れてきてよ」「最近誘いづらくてさ」。ホワイトボードが「人を集めるには」「同世代」といった文字で埋まっていく。

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 あいねさんが初めてデモに行ったのは高1の12月、特定秘密保護法施行の日だった。「やばい法律」という漠然とした感覚を確かめたいと思った。デモで、大学生が声を上げる姿に衝撃を受けた。「あんなに政治的な思いを真っすぐに口にするの、見たことがなかった」

 ほどなく、安保法制への反対デモにも参加し始めた。国会前での抗議行動で知り合った高校生と一緒に昨年7月、ティーンズ・ソウルをつくった。

 一般的なサラリーマン家庭で育った。家で政治の話はしない。デモで「戦争反対」と書かれた横断幕を持たされた時は、「テレビに出ているわよ」と母が不安そうに電話してきた。

 「でも、親はやりたいことを尊重してくれているみたい」という。デモで知り合った大学教授と食事に行ったことを話すと、母は「いい経験だね」と言ってくれた。

 小6のとき、東日本大震災が起き、多くの命が奪われた。原発事故で故郷を追われた人たちが連日、テレビに出ていた。社会のことを考えるようになった原点は、そこにあったように思う。「何が正しくて、何が間違っているのか。無関心で生きていたら気づかない。やばい」

 学校の先輩にツイッターで「デモは馬鹿が騒いでいるだけ」と突き放されたこともある。「めっちゃへこんだ」。それでも、自分ができることを考え、行動に移したい。だからいま、仲間たちとここにいる。

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 東日本大震災が、社会や政治に目を向けることにつながったというメンバーは多い。

 東京都多摩市の高校1年小川空さん(16)は震災が起きたとき、小5だった。夕暮れまで友達とサッカーボールを追いかける日常が崩れた。当時住んでいた都外の関東地方の街に、放射線量が周辺より高い「ホットスポット」があると言われた。

 外での遊びは控えて、給食の牛乳は飲まないで――。母は心配を募らせ、ついに中1のときに引っ越すことに。「友達と引き離さないで。普通の毎日を送らせてほしい」。その時は、母への憤りしか感じなかった。

 だが、中3の頃、「悪いのはお母さんじゃない」と気付く。

 「日本は平和で豊かないい国。心配しなくても、何も悪いことは起きない」と思っていたが、震災で崩れた。「自分の頭で考えて、国のすることを疑ったりしないと、平凡な日常だって崩れてしまう」。それに気付かせてくれたのは母だ。いまは、そう思う。

 昨年6月、安保法制に反対する学生団体「SEALDs(シールズ)」主催の抗議行動を見に行くと、大学生のスピーチが耳に飛び込んできた。「日常生活の中で一人ひとりが、どう行動するかだ」

 高校では「渋谷でデモなんて、はっきり言って邪魔」「なんか意味あんの?」と言われる。でも、気にしない。「みんな違っていていいと思う」

 昨年12月、ある先生が授業中に、空さんが大好きな言葉を黒板に書いた。「孤独に思考し、判断し行動してください」。シールズのメンバー奥田愛基さんの言葉だ。先生とふと目が合った。背中を押された気がした。(市川美亜子、後藤遼太)

 ◇18歳選挙権が今年、導入されます。10代後半の若者たちは、社会に、政治に、どんなまなざしを向けているのでしょうか。4回にわたって追いかけます。

 ■「仲間につくす」参画意識

 若者の思考や行動に詳しい、大手広告会社ADKの「ワカスタ(若者スタジオ)」プロジェクトリーダー、藤本耕平さんの話

 日常的にSNSで誰かとつながっている若者にとって、仲間の関心事は自分事とほぼイコール。仲間内のサプライズパーティーなどを好むのも、「相手を喜ばせて自分もハッピーになりたい」という、素朴な「つくしたい」気持ちからだと思う。

 顔の見える誰かのためになら「つくす」ことをいとわない。そうした思いは政治にもつながるのでは。「地元がこんな風になったらいいな」「こんな学校になればいいのに」と、身近なところから社会に興味を持てるようになる仕掛けや回路作りが欠かせない。学校のほか、企業やNPOなど様々な主体が、若者の政治への意識を育てる役割を担うことが必要だ。

 ■「政治的中立」判断は学校に

 選挙権年齢が18歳以上に引き下げられるのを前に、総務省や文部科学省は啓発に力を入れる。昨年12月から東京や福岡などで、若者向けにシンポジウムや模擬投票などのワークショップを開催。3月までに全都道府県で催す予定だ。選挙制度を解説する高校生向けの副教材も約370万部作成。教員向けの指導書も約20万部つくった。

 学校での政治教育で重要視されるのが、「政治的中立」だ。教員向け指導書では、安全保障法制など意見が分かれるテーマについては教員が中立性を守るよう繰り返し指摘している。

 自民党も昨年、教員に政治的中立を求める提言をまとめた。逸脱したら罰則を科すよう、法改正をめざす動きもある。ただ、どこまでが中立かという線引きは各学校に委ねられており、「中立の定義があいまい」との批判もある。

 また、文科省は1月、高校生が休日に校外でのデモなどの政治活動に参加する場合、学校に届け出させることを認める見解を示した。これに対しては「規則で縛れば、生徒が主体的に考える力が育たない」といった指摘が出ている。(前田育穂)

 <訂正して、おわびします>

 ▼4日付教育面「いま子どもたちは」の記事で、高校2年のあいねさんの年齢が17歳とあるのは、16歳の誤りでした。

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