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 関東大震災で被災した聖路加国際病院の再建を果たした後、心臓を病んで58歳で亡くなった創立者のルドルフ・トイスラー院長。聖路加国際大学の卒業式で、私は院長が抱いていた医療への情熱について話を続けました。

 1934年、亡くなったトイスラー院長の遺体は、東京帝大付属病院で解剖されました。聖路加財団の評議員をしていた東大の長與又郎教授たちが、モーニング姿で執刀しました。

 院長の遺言は「Let the work go on(さあ、仕事を続けよう)」でした。そして生前から病院の全職員に次の言葉を呼びかけていました。「キリスト教の愛の心が、人の悩みを救うために働けば、苦しみは消えて、その人は生まれ変わったようになる。この偉大な愛の力をだれもがすぐわかるように計画されてできた生きた有機体がこの病院である」

 相次ぐ厄災に屈せず、トイスラー院長と職員たちは、愛の力を体現する「有機体」であるべく、この病院を守り続けました。

 更に私は卒業生に「Not four years, but forty years」という言葉も贈りました。「大学で学んだ4年間は単なる4年間ではなく、今後40年もの長い人生を決める」。米国スタンフォード大の教育理念としても知られていますが、私にとっては51年、留学先の米国のエモリー大に赴く際、英国国教会の司祭にいただいた言葉なのです。

 これから看護の実践現場で働く卒業生たちには、「病院とは何か」を的確に表現したトイスラー院長の「有機体」の一節を今後も心にとめてもらいたいと思っています。一方で私個人としては、最後の言葉「さあ、仕事を続けよう」という、医師としての使命感を貫いた言葉にも、強い思い入れがあります。

 学舎(まなびや)を巣立つ若者たちと今の私に共通する言葉。それはインドの詩人タゴールが死を思って記した「The Wings of Death(最後のうた)」の中にあるかも知れません。「わたしは身近に友らを求める――かれらの手のやさしい感触のうちに、世界の究極の愛のうちに、わたしは人生最上の恵みをたずさえて行こう」。今はこの一節が、卒業生のすがすがしい心境にも、私自身が描く「これから」にも、当てはまるように思えます。(聖路加国際病院名誉院長)

 <訂正して、おわびします>

 16日付「104歳・私の証 あるがまゝ行く」の記事とイラストで、「Let’s the work go on(さあ、仕事を続けよう)」とあるのは「Let the work go on」の誤りでした。担当者の確認不足でした。

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