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 戦後71年を迎えるこの夏。戦争や原爆を題材に、平和を問う映画が相次いで公開される。朗読から、ドキュメンタリー、フィクション、かつての名作まで。様々な表現で過去を見つめ、未来につないでいく挑戦でもある。

 ■綾瀬はるか朗読「いしぶみ」 「平和の尊さ、感じて」

 公開中の「いしぶみ」では、俳優の綾瀬はるかが、原爆で命を落とした広島二中(旧制)の生徒の遺族の手記を朗読する。1969年に広島テレビで放送された番組を、是枝裕和が監督を務める形で昨年リメイクして放送、再編集して映画にした。

 手記は8月6日の生徒たちの姿を具体的に描く。綾瀬が特に印象に残っているのは、ひどいやけどを負っても両親や家族を心配させないよう弱音を吐かずに最後まで頑張って、息絶えた子どもの話だという。「戦争中とはいえ、いつもと変わらない朝を迎えたそれぞれの家族の中で、原爆投下で一変してしまったことが細かく鮮明に想像でき、一つ一つの痛みや苦しみを考えさせられました」

 生徒の写真が投影される舞台で、綾瀬は独り静かに手記を読み上げる。最初は感情移入して悲しくなったが、何回か読んで客観的になるよう気持ちを抑えた。事態が深刻になるにつれて力強さを加えて読んだという。

 広島出身。祖母から戦時中の話を聞き、授業で原爆について学び、俳優としても戦争を考える番組に携わってきた綾瀬。「戦争を経験された方が同じ時代を生きている。『絶対にしちゃいけんものよ』と、経験したから言えるひとことの重みを伝えていきたい。戦争を知らない私たち、もっと若い子どもたちには、同じ年代の子たちのことを知ってもらう今回の映画のような形で、原爆や戦争の悲惨さ、平和というものが本当に尊いと深く感じてもらえたらいいな、と思います」(佐藤美鈴)

 ■人間爆弾「桜花」 日本人の死生観に迫る

 有人誘導特攻兵器「桜花」。その搭乗者を選び、出撃命令を出していた元海軍大尉にカメラを向けた「人間爆弾『桜花』 特攻を命じた兵士の遺言」が、8月下旬から各地で順次公開される。

 澤田正道監督はフランス在住。「日本から遠く離れている人間が、特攻に象徴される日本人の死生観にどう近づけるか。これが製作動機です」

 映画は、元大尉の林冨士夫さんへのインタビューのみで構成される。「文化大革命を体験した女性のインタビューだけで作られたワン・ビン監督の『鳳鳴』という3時間の作品があります。映画は小細工せず、シンプルな方が良いんです」

 林さんは、天皇の戦争責任を口にしたかと思えば、敵艦に突っ込んでいく時の心地よさを語ったりする。見終わった後に、一言で感想が言えない作品だ。「他の語り部と決定的に異なるのは、林さんが過去の話でなく、現在として戦争を語っている点。過去として話すと、『戦争はいけない』という現代のフィルターがかかってしまう」

 澤田監督は言う。「何かを伝えようとすると、上から目線になったり、ヒステリックになったりする。常にユーモアと冷静さを持っていたいですね」

 昨年6月、フランスで劇場公開された初日に、林さんは93歳の生涯を閉じた。「この映画を完成させておいて本当に良かった」(編集委員・石飛徳樹)

 ■アニメ・米作品、様々な視点

 戦後70年の節目だった昨夏、極限状態の兵士を描いた塚本晋也監督の「野火」が公開された。低予算だったが、口コミで人気が広がった。反響は続き、今年も全国26カ所で上映される。

 前年の公開作がこれほどの規模で上映されるのは異例。塚本監督は「製作当初から毎年終戦記念日で上映されるような映画にしたいと思っていた」と言う。

 東京・池袋の新文芸坐では、8月6~21日、「8・15反戦・反核映画祭」と題する特集の全29作品の一つとして上映。6日に奈良岡朋子、7日には吉永小百合のトークショーがある。

 変わり種は日本初の長編アニメーション映画「桃太郎 海の神兵」のデジタル修復版。7月23日から東京などで上映される。戦意高揚映画として製作され、1945年に公開された。桃太郎を日本軍の司令官に見立て、南洋の鬼ケ島へ戦闘機で鬼退治に行く物語だ。

 デジタル修復版は今年のカンヌ国際映画祭に参加した。鬼の姿をした白人が桃太郎にやっつけられる描写もあるが、欧州の記者たちは屈託なく笑っていた。鬼の中に、米のコミックの著名なキャラクターも登場する。権利関係をクリアし、修復版で復活した。

 原爆がモチーフの米国映画もある。8月27日公開の「リトル・ボーイ 小さなボクと戦争」。戦場の父を思う8歳の少年の目線で第2次大戦を描く。監督はメキシコ出身のアレハンドロ・モンテベルデ。米国の視点から戦争や原爆についても描かれる。

 東京・渋谷のユーロスペースでは7月30日から特集上映「原爆と銀幕―止まった時計と動き始めた映画表現―」が開かれる。

 <訂正して、おわびします>

22日付文化面「戦争の証言 映画でつなぐ」の記事で、「エンジンのない有人誘導特攻兵器『桜花』」とあるのは誤りでした。エンジンは搭載していました。確認が不十分でした。

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