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 米国の反捕鯨団体「シー・シェパード」(SS)による日本の調査捕鯨への妨害行為が永久に禁止されることになった。調査捕鯨を担う日本鯨類研究所(東京)と共同船舶(同)が、SSと合意した。日本側関係者には安堵(あんど)が広がったが、捕鯨を巡る厳しい状況は依然変わらない。

 「これで妨害行為が一定程度は収まる」。合意が明らかになった23日、水産庁の担当者はこう話した。

 SSは反捕鯨活動の中心的団体。世界で唯一調査捕鯨を行う日本の捕鯨船に対し、船を衝突させたり、ロープを流してスクリューを傷つけようとしたりするなどの行為を繰り返してきた。

 同研究所が発表した合意内容などによると、調査船とその乗組員を攻撃することや、安全航海を脅かすような航行が永久に禁止される。調査船の500ヤード(約460メートル)以内に近づくことや、SSのグループ団体に資金を提供することもできなくなる。日本側は和解金(金額非公表)を支払うが、妨害活動には使えないとの条件がついている。同研究所などが2011年に、妨害禁止を求めて米ワシントン州連邦地裁に起こしていた訴訟が、裁判所の調停で事実上決着した。

 SSは訴訟中も、裁判所の命令に反して妨害活動を続け、14年には法廷侮辱罪に当たるとされて約3億円を日本側に支払った。妨害禁止で合意したのは、訴訟費用がSSに重くのしかかったためとの見方がある。

 ただ今回の合意は、SSとその創設者ポール・ワトソン代表を対象としており、米国以外のSSのグループ団体は含まれない。SSの活動拠点は世界に広がっており、過去の妨害活動には豪州やオランダなどの船が参加。合意を受けて豪州の団体はフェイスブックに、「鯨を守る私たちの使命を止めることはできない」などと書き込み、妨害を続ける姿勢を示した。

 ■捕鯨、視線厳しく 国際社会

 妨害が止まったとしても欧米先進国の多くが捕鯨に反対する状況は変わらず、日本の調査捕鯨への国際社会の視線は依然厳しい。

 日本の調査捕鯨を巡っては、国際司法裁判所(ICJ)は14年、捕獲数が多く肉を販売しており、実質的に商業捕鯨に当たるとの理由で、南極海での調査捕鯨を違法と判断。日本は調査捕鯨の中止に追い込まれた。昨年12月、ようやく再開にこぎ着けたが、捕獲数を減らし、殺さないで皮膚だけを調べる調査を盛り込むなど、大幅な規模縮小を余儀なくされている。

 科学的研究のためとして認められている調査捕鯨を日本が続けるのは、鯨が増えていることを証明するデータを集め、現在禁止されている商業捕鯨への理解を得るためだ。食用目的で鯨をとる商業捕鯨は、1982年に国際捕鯨委員会(IWC)が一時禁止としたが、日本は「鯨は重要な食料資源」との立場を堅持し、商業捕鯨の再開を目指している。ただ、この間にも国内の鯨肉消費量は低迷し、捕鯨に対する国民の理解も低下しかねない状況が続く。商業捕鯨再開への道筋は見えていない。(野口陽)

 

 ■日本の調査捕鯨を巡る動き

1948年   IWC設立。「鯨類資源の保存と捕鯨産業の秩序ある発展」が目的。日本は1951年に加盟

  82年   IWCが年次会合で商業捕鯨の禁止を決定

  87年   日本が調査捕鯨を開始

2006年ごろ SSが調査捕鯨の妨害を始める

  10年   豪州が南極海での日本の調査捕鯨は違法としてICJに提訴

  11年   日本鯨類研究所などがSSを提訴。妨害行為の永久禁止求める

  14年   ICJが日本の調査捕鯨の中止を求める判決。日本は調査捕鯨中止を決定

  15年   日本が新計画で調査捕鯨を再開

  16年   日本鯨類研究所などの訴訟でSSの妨害永久禁止で合意

 <訂正して、おわびします>

 ▼24日付総合3面の調査捕鯨妨害禁止に関する記事につく写真説明で、「日本の調査捕鯨船『日新丸』(左)」とあるのは、「日本の調査捕鯨船『日新丸』に給油する補給船(左)」の誤りでした。確認が不十分でした。

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